先日、バーニンガムの絵本『アボカド・ベイビー』を読んで、テーブルの上に置きっ放してしていたら、それをカミさんが読んでおもしろいと言っていた。ぼくはそーかい・・・、それってちっともバーミンガムらしさんがない平凡な絵本だよ、って言ったんだ。そしたら、そこがいいんだって。
そーだよな、バーミンガムってすごいクセが強い。一見、賢そうな男の子や、愛きょうのある動物たちが主人公の明る絵だから、たぶん、無難な絵本だと思って子どもに買い与えている人も多いと思う。
しかし、初期の作品を読むと、絵も内容も極めて暗い。以後は明るい色使いで愛きょうもたっぷりだけど、根底にある精神性は初期から変わっていないとぼくは思っている。絵は明るいけど、根っこは暗い。
本書なんかいかにもバーミンガムらしい。女の子シャーリーはお風呂に入ってんだけど、母さんが何くれとなく彼女に小言を言いながら、片付けなんかをしている。シャーリーはと言えば、そんな小言は聞こえていない。
なんとアヒルのおもちゃにまたがって、配水管を伝って、下水をも下り、出て来た川が中世の時代。湯上がりタオルをはおったまま甲冑の騎士とともに馬上の人になっている。たぶん、悪い魔女に付けねらわれているみたいだ。母さんの小言と意識の先の落差が激しすぎて、おもしろいったらない。
もう おふろから あがったら、シャーリー
原題 Time to get out of the Bath, Shirley
著者 ジョン・バーニンガム((c) John Burningham 1978
訳者 あきの しょういちろう
発行 童話館、1994年5月