藤沢周平の『たそがれ清兵衛』に共感

「寝ている妻女の夜具をはいで、そろそろと抱え起こす。つぎに手をそえて立たせると、おぼつかない足どりの妻女に手を貸して、厠(かわや)まで連れて行く。そのひと仕事が終わって、妻女を寝かしつけると、清兵衛は今度は台所に立つ。」
「暑ければ湯をわかして身体を拭(ふ)いてやったり。」
これは、藤沢周平の短編小説『たそがれ清兵衛』からの引用。今読んでいる『男が介護する』(津止正敏著、中公新書)の中で紹介されてて、読みたくて電子書籍を買い、すぐに読んだ。
ぼくもまたカミさんのトイレを手伝ってる。二、三日おきにはシャワーで身体を洗っている。さらにはエッセンシャルオイルでマッサージもする。とくに訪問リハビリの理学療法士が来る日は入念にマッサージをして、体臭に気をつかっている。カミさんがお気に入りの若い男子だからネ。
こういうぼくだから清兵衛にとても親近感を持つわけ。ま、清兵衛夫婦は30代、うちは立派な老老介護の違いはあるが、介護に対する清兵衛の立ち居振る舞いにぼくはとうてい及ばない。清兵衛は介護人として、とても自然体に見える。ぼくはまだまだ介護人としての迷いがあると思う。だからまだ介護人と言えないだろう。来年の目指すところは介護人として自然な振る舞いを身につけることだ。
立派な介護人になるのは無理でも、そこそこの介護人になりたい。今年のカミさんは様々な身体の不調を訴えて何度も病院通いをした。そのたびに身体は弱体化し、想像もしなかった生活になった。もう、カミさんの元気な姿に戻ることはないと思う。でもぼくは現実を肯定的に受け入れるつもり。来年はわたしら夫婦のライフスタイルの新たなステージになればいいなと思うんだ。