「nu jazz」を素材に阿木譲氏のDJイングは、昨夜22時から27時までの連続5時間だった。ここ2,3年の間にフィンランドやイタリーなど、ヨーロッパで発売された nu jazz のレコードばかりを使ったと、氏は語っていた。阿木氏のDJイングは全く休みなく疾走する。緻密に構成された5時間のプランの中で、状況を見ながらレコードを選択しているようだ。最初の構成がしっかりとしているせいだと思うが、長時間に関わらずダラダラと時間だけが経過することはない。逆にいうと、nu jazz と5時間にわたって対峙し続けるのは、精神的にも肉体的にもそれなりの覚悟が必要だ。むしろ、踊りながら聞いた方が疲れは少ないと思うが、ぼくは踊らない・・・。
とにかく疲れは想像以上で、車で送ってくれたNさん、ありがとう。帰ってからも身体は疲れてるけど、精神的には興奮状態で寝付けず、午後1時を過ぎてから仕事の電話で起こされてしまった。好きな時間を持つには多少の犠牲はしかたないよ。
大阪中央区南本町のクラブ、jaz’room “nu things” は住まいから近いということもあって、ぼくにとってはローカルな体験とも思えるのだが、身を置いたサウンド・スペースはとてつもなくグローバルな思いに浸された。最近は、このような nu jazz を東京とか他所でも聞けるんですか? と阿木さんにぶつけた。いや、ここだけだよ。という返事。こんなDJをやるのはぼくだけだから、と言う。ぼくはクラブ・シーンを全くといっていいほど知らないので、阿木さんの言葉をそのまま受け入れるしかないが、考えてみれば年齢的にも彼の長い音楽キャリアと並ぶDJがいるとも思えないし、新しい音楽をキャッチする動物的な第六感も人並みはずれている。そう考えると、他所にはいない、という阿木さんの言葉にリアリティを感じた。