どうぶつさいばん タンチョウは悪代官か? / 環境問題の絵本

ぼくは北海道出身だから、ここに描かれた風景に郷愁を誘われる。と、いってもこの絵本の舞台の湿原には行ったことがない。それでも郷愁を感じるのは、北海道と本州を隔てる風景の決定的な違いがあるからだと思う。この絵本ではミズナラの大木が物語の中心にある。ぼくの記憶の中にもミズナラの大木が大きな位置を占めている。真夏にも、厳冬にも訪ねたあのミズナラの大木はまだあの場所にあるだろうか?

この絵本は、湿原のまん中にある丘に立つミズナラの大木の周りで、年に一度開かれる動物裁判の記録がストーリーとなってる。今回の裁判ではウグイがタンチョウ鶴を訴えました。タンチョウが増えて、ウグイが餌としてどんどん食べられてしまう、という訴え。

タンチョウをはじめ、シマフクロウ、ヒグマ、キタキツネなど動物たちがたくさん集まって来る。双方の弁護士が他の動物や人間に証言を求めて考える。

人間の証言からタンチョウへの給餌が始まったのはひどい冷害があった50年前だったという。冬場に餌がなくて、タンチョウの親子が弱っていくのは見るに見かねて、餌を与えたのが始まりだという。

そのおかげで、タンチョウはどんどんと増え続ける。一方で、湿原は開発のために半分になった。そのためにタンチョウへの給餌はさらに欠かせないものになる。但し給餌は冬場だけなので、ほかの季節にはタンチョウは湿原のウグイやサンショウウオなどを食べまくる。

いまや、人間の可哀想という給餌の理由が問われていることを啓発する絵本です。

どうぶつさいばん タンチョウは悪代官か?
作 竹田津 実(たけたづみのる)
絵 あべ弘士(あべひろし)
発行 偕成社、2006年4月

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カテゴリー: 絵本