Blue Note 1500番台のなかでこのアルバムの存在は知っていたけど、ジャズじゃないので無視していた。2ヵ月ほど前にライ・クーダーの『ビエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』を聞いてから、キューバ・ミュージックに興味を持ったけれど、何を聞いていいのか分からないままになっていた。そしたらいきなり、Blue Note に『Sabu / Palo Congo』があるのを思い出した。
聞いたら、すごいキューバ・ミュージックで驚いてしまった。『ビエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』は官能的な美しさに圧倒されたけど、こちらの方は、魂の奥から響いて来るようで、商業化されてないような、そのピュアなサウンドに圧倒された。アルバム・タイトルが『パロ・コンゴ』だし、サブーというゴンガ奏者のリーダーアルバムだからコンガが中心かと思っていた。ホレス・シルヴァーの『Horace Silver Trio And Art Blaky-Sabu』(Blue Note 1520)ですでに、サブーのコンガは聞いている。聞いているが、サブーのリーダーアルバムを聞きたくなるようなものでなかった。
しかし、このアルバムでほんとうにすごいのは、アルセニオ・ロドリゲスのギタープレイなんだ。正確にはトレスという楽器らしいけど、このアルバムでは〈Rhapsodia Del Maravilloso〉が素晴らしい。今日は繰り返し、イヤになるほど聞いていた。このサウンドを聞くことは、音楽の魂という観点からビバップやハードバップを理解するうえで欠かせないと思った。ハードバップが絶頂期に達しようとする1957年に、ジャズ専門レーベルのブルーノートがこのアルバムをレコーディングしたのは、意味があることに違いない。