逃げ去る恋 / フランソワ・トリュフォー監督

1978年フランス映画。するッと終わるラストが粋で、いつまでもいい思い出のように脳裏に刻まれる。『大人は判ってくれない』(1959)、『アントワーヌとコレット』(1962)、『夜霧の恋人たち』(1968)、『家庭』(1970)と続いてきたアントワーヌ・ドワネル五部作の最終章。楽しい、とても楽しいくて笑いをかみ殺しながら見ていた。若い時に見てもこうはいかない。いいかげんに年を食ってから見ると、こんな面白い映画はない。男と女の苦くて、こっけいな関係。おもしろい。

男と女の関係の前に、息子には母親との微妙な関係が下地にある。大人の女たちはそこのところをいつも見破ってしまう。若い時に惚れたコレット、離婚が成立したクリスティーヌ、愛人のサビーヌの3人の大人の女にアントワーヌ(ジャン・ピエール・レオ)は翻弄され続ける。走っていくアントワーヌを見て、コレットがぽつりと言う。「変わってないわ」って。1944年生まれのジャン・ピエール・レオはこの映画のときは34歳。ぼくは彼より2歳だけ若い。リアルタイムにジャン・ピエール・レオをゴダールとトリュフォーの映画で追ってきた。仲間内で、青春映画の彼の仕草を真似しておどけたりしていた昔が懐かしい。そして、ぼくもまたアントワーヌのように職を転々としたり・・・落ち着きがなかった。コレットの言葉がぐさりと胸に突き刺さる。

思い出のシーンは五部作中の前の映画のカットが多用されている。これがいい。思い出をアントワーヌと共有している感じでとてもいい。母親との関係、高卒で働いてたこと、この映画みたいな規模の印刷工場で働いていたこともあった。なんやかやと、アントワーヌと共通点をみつけだせるので、他人事に思えない映画だった。

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