NOVO(ノボ)/ ジャン=ピエール・リモザン監督の超感覚的な映画

何の予備知識もなしに見たけど、とても今を感じるアーティスティックな映画でした。まいってしまった。やっぱりフランス映画はいい。この研ぎすまされた感覚がとてもいい。俳優は美男美女、超モダンなオフィスに家具。モダンな現代アート。自然の中のロケでも、映像は人工的に美しい。

主人公のグラアム(エドゥアルド・ノリエガ)は記憶障害を持っていて、少し前のことも次々に忘れてしまう。加えて発達障害的な個性も加味されたキャラクターとして登場する。モダンなオフィスでコピー係として働いているが、新しく職場に来た派遣社員のイレーヌ(アナ・ムグラリス)がグラアムに強烈に恋をする。グラアムは昨晩のイレーヌの記憶を失っているので、彼女にとって彼は常に新しい恋を続けることになる。体験の積み重ねがないことで生じる新感覚・・・。いや、イレーヌではなくて、わたしたち観客が。

で、この映画をラブ・ストーリーなんて言ってしまうと、的外れかも、もしくはダサイかも。スタイリッシュな映像を皮膚感覚で共感する映画だと思う。だから、ただ楽しく見ているだけでいい。解釈はいらない。音楽も広いジャンルから選択されていた。ぼくの知っているのは、モダンジャズのビリー・ホリディだったけど、超モダンな映像の背景に彼女のしわがれたラバーマンを響かせる感覚には驚いた。

ジャン=ピエール・リモザン監督は1949年生まれだから、ぼくと同世代。というと、多感な年頃にゴダールなんかのヌーヴェルヴァーグに出会っているわけ。だから、この映画を見ていて共犯めいた共感を覚えた。特に、ぼくが初めて出会ったヌーヴェエルヴァーグはゴダールの『女は女である』(1961年)なんだけど、まだ十代だった。『NOVO』のアナ・ムグラリスの美しいことといったらないけど、『女は女である』のアンナ・カリーナの美しさからもすごい印象を受けたことを覚えている。ハリウッド女優とは次元を異にする美しさが新鮮だった。それは、もちろん『NOVO』にも言えること。

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カテゴリー: Movie