おもしろい! 昔からのMacファンにはたまらない本だろう。本書を読みながら、ぼくは20年前を思い出していた。Mac Plus を買うのは1987年12月25日だったが、買うと決めたのは半年以上も前のことだった。パソコンを使用していた2人の同業者から助言を得て、NECの98シリーズの下見に出かけたのだが、カミさんが売り場のすみっこにあった Mac Plus を見つけて、これにしよう、と言ったのでわが家では Mac に決まったんだ。
可愛いから・・・というのが最大の理由だが、いずれ、コンピュータは必須アイテムになることをひしひしと感じていたものの、BASIC で動いていた98シリーズを使えるようになるかどうか不安だった。Mac に対しては多少の知識はあったが、とにかく高価だったから、縁のないマシンという位置づけだった。でも、カミさんが言うのでぼくのこころも動いた。しかし、高価なマシンに投資するだけの確かな動機が必要だった。それから半年間、Mac のことを勉強した。
学習したのは、確か4、5巻からなる本だったと思う。Macのテクニカルな解説書というよりも布教活動みたいな内容しか記憶にないが、ぼくは深く納得して、Macなら使えるに違いないと確信したんだ。本書の『アップル・コンフィデンシャル』でも265ページに紹介されている自転車のロゴがある。アップル・ユニバーシティ・コンソーシアムの「心の車輪(Wheels for the Mind)」キャンペーンのロゴだそうだ。20年前に学習した本にはこのロゴが多用されていて、Mac(コンピュータ)を使うことで、精神的行動範囲が広がるというようなことを言っていた。ぼくはこの考え方にいたく感心して、Mac購入の動機を確かなものにしていった。
本書はアップル社の歴史が書かれているだけで、布教の本ではないが、読んでいたら20年前の感慨がよみがえった。今迄も雑誌や書籍で、断片的に流布されていたアップル社内の不確かな出来事が、本書では整然と書かれている。長くアップル製品を使っていた人ほど面白いに違いない。ぼくは Mac Plus からだが、それよりずっと前の「アップルII」から、「アップルIII」そして「リサ」の開発状況は詳細に書かれている。もちろん、初代の「アップルI」も。ここでは、ウォズニアックについての記述が多い。
『アップル・コンフィデンシャル 2.5J』は英語版の 2.0 をベースに、林信行氏が執筆したiPod の歴史の章が追加されている。これが2.5Jの意味なのだと思う。本書はまず、このiPodの章から始まるが、記憶に新しいだけにとても面白く読める。そして、スティーブ・ウォズニアックとスティーブ・ジョブスの作った「アップルI」が始まる。そしてマッキントッシュの開発から製品化、ジョン・スカイリーの出世と転落、さらには、ビル・ゲイツのウインドウズ開発とアップル社の関係などが書かれている。そうそう、マッキントッシュはゼロックスの革新的なコンピュータ「アルト」をヒントに作られたものだと、ことある度に言われていた頃があった。そのいきさつも詳細に記述されていて、おもしろい。
《下巻につづく》
アップル・コンフィデンシャル 2.5J 上
著者 オーウェン・W・リンツメイヤー、林 信行
発行 アスペクト、2006年5月