1998年、ラウル・ルイス監督によるマルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて』の最終章『見出された時』の映画化。といってもぼくは『見出された時』を読んでいないので、映画のストーリーをよく追えなかった。小説を読んだ人にはたまらない映画だろう。ぼくも少しは読んでいる。20代と30代に2回この小説に挑戦して、2度とも挫折している。第1章の『スワン家の方へ』、第2章『花咲く乙女たちのかげに』、第3章『ゲルマントの方』・・・ここいらで挫折している。また、読むとしたら最初から読むことになるし、それはもう無理かもしれない。ひょっとして、ネットにつながらない生活をすることになれば、その時は最初にこの小説を読みたい願望はある。そんなことで、ストーリーは追えないが、登場人物はだいたい分かった。プルースト自身が主人公の少年時代、青年時代、現実の時間と、場面がめまぐるしく変わるので、映画はあくまでも小説を知った人を前提に作られている。
全く知らなくても、19世紀から20世紀にかけてのフランス上流社会が精緻に描かれているので、目の保養になる。特に私邸にお客を呼んで行われる音楽会のシーンは見もの。カトリーヌ・ドヌーブの存在感が強い。そして、ジョン・マルコヴィッチのダンディーな男爵に見入った。この俳優さんはすごい。ぼくはベルトリッチ監督の『シェルタリング・スカイ』のマルコヴィッチが大好きなんで、この映画でも感心して見ていた。