昨日のお昼のNHK-TVのバラエティ番組「スタジオパーク」に女優の岡田茉莉子がゲスト出演していた。お昼の番組だから、話は固くないが、吉田喜重監督の『鏡の女たち』(2002年)について話すときは熱が入っていた。その映画はぼくも前にテレビで見ているが、ちょっと難しくて、まだこのブログに感想文を書けないでいる。
三世代の3人の女性が登場する。娘は女の赤子を出産してすぐに疾走した。母はその娘を28年間捜し続けている。そして、そのときの赤子である孫を育てている。孫は成人している。その3人の女性がアイデンティティを捜す物語だ。それを通して原爆投下の広島を考える映画になっている。
母には娘が必要だが、娘には母が存在しては生きられなかった。非常に重い幼児体験の物語でもある。難解で重い。この母を演じているのが岡田茉莉子だ。
実は広島への原爆投下を主題とした映画を日、英、仏の3カ国合作で企画されたという。ヨーロッパでの女優のオーディション、日本でのセットなども完成し、撮影直前になって、日本の会社が降りたために、実現しなかった企画があったという。それはとても残念なことだったと語った。その企画の延長に本作品があるらしい。
岡田氏はこの映画の中で、最も重要なシーンとして、原爆ドームのほとりを流れる元安川の川面を母、娘、孫の3人の女性が並んで眺めるシーンをあげた。ここで、岡田氏の長いモノローグがある。このシーンに女優生命をかけたと語る。女優というものは、演技をしている自分を常に別の自分が眺めているものだが、この撮影シーンでは、眺めている別の自分はいなかったと言う。
昼からリハーサルを始め、本番は夜だったという。そのシーンに2日間をかけたそうだ。長い台詞だが、元安川で亡くなった死者たちによって語らされているようだったと、語っていた。ぜひ、もう一度見たいと思った。