《2006.6.7》
ガンピーさんはボートを持っている。家の前の川からこぎ出すと、少年と少女がのっけてくれ。そして、うさぎがのっけてくれ。そして、ネコが、イヌが、ブタが、ヒツジが、ニワトリが、ウシが、ヤギが・・・。で、ボートの中は超満員でいさかいも始まって、ボートはひっくり返えり。歩いて草原を横切ってガンピーさんの家に帰って、みんなでお茶をする。それからみんなが帰っていくお話。リズミカルで動物の絵もバーニンガムならでの楽しい絵本。そして、この出来事が過去の古い追憶というよりも、この世ならざる世界に思えてくる・・・あの世の記憶をたどったんじゃないだろうか。何気ない日常を描いているようなのに、じつは非現実な世界がひろがる、ちょっと不思議な絵本。
《2007.5.27 追記》
ジョン・バーニンガムの絵本を全部じゃないが、一通り読んできたら、『ガンピーさんのふなあそび』(1970)と『ガンピーさんのドライブ』(1973)が特別に重要な作品に思えてきた。当初は書かれた順番を気にしないで読んでいたが、60年代の作品を読んでからは違った。60年代と70年代以降の作品にははっきりと境界線があるようだ。その境界線にあるのが、この『ガンピーさんのふなあそび』だと思う。
『バラライカねずみのトラブロフ』(1964)
『はたらくうまの ハンバード とロンドン市長さんのはなし』(1965)
『ずどんといっぱつ――すていぬシンプだいかつやく』(1966)
60年代のこの3作品に強いインパクトを受けた。ここには抑圧されている者たちへの深い共感がストレートに表現されている。その共感を抽象化したのが『ガンピーさんのふなあそび』と感じている。
一見、牧歌的に展開される内容だが、よく見つめているとその非現実的な妖しい世界が広がっている。可愛く描かれた動物たちと妖しい世界の落差から生じる魅力に見る者が捕まってしまう。こうした非現実的な抽象世界が単なる思いつきではなくて、非抑圧者への深い共感から生じていることを、60年代の作品を読むことで気づかされた。
本書では絵の方も60年代作品の大胆な表現を持ちつつも、洗練されつつあるところに留まっている。次作の『ガンピーさんのドライブ』から70年代以降のバーニンガムの洗練された絵が加速していく。
ガンピーさんのふなあそび
原題 Mr Gumpy’s Outing
著者 ジョン・バーニンガム((c) 1970 by John Burningham)
訳者 光吉夏弥
発行 ほるぷ出版、1976年9月