1996年アメリカ映画。モニター画像ばかりだがもう4回目の鑑賞。見終わると、分かっていても、辛いようなもどかしい気分に襲われる。もう見ない映画のリストに入れようかと思うが分からない。暗くなりたい自虐的感情の時は、またいつか見るかもしれない。今夜は見ながらベルナルド・ベルトルッチ監督の『シェリタリング・スカイ』をダブらせていた。これも4、5回は見ている好きな映画だ。やっぱり、どうしようもないもどかしさに襲われる映画だ。この2作品に共通するのが砂漠。砂漠の中では砂嵐にさからえないように、白人は運命にさからえずに翻弄される。その運命はいつも悲劇的結末で終わることを知っているから、やるせない気持ちに襲われる。
第2次大戦直前の北アフリカで砂漠の地図を作成しているイギリス王立地理協会の貴族階級の白人キャンプがある。ある日、メンバーの一人が双発機を操縦して砂漠のキャンプに着陸する。結婚したばかりの妻が同乗している。妻のキャサリン(クリスティン・スコット・トーマス)はアルマシー(レイフ・ファインズ)と初対面の挨拶をする。この映画はキャサリンとアルマシーの恋の物語だ。2回目以降の鑑賞では悲劇で終わる二人の恋の結末を知っているので、彼女が双発機から飛び降りて、アルマシーたちのいるテントにやってくるほんの数秒のシーンに胸が高鳴る。
当初は相手の存在を互いに醒めた目で見ていた二人が、恋に落ちていく過程がすごい。クリスティン・スコット・トーマスとレイフ・ファインズのかっこいいことといったらない。
大戦が勃発して、ドイツが北アフリカに侵攻してくるどさくさの中で、アルマシーはキャサリンを死なせ、自らも重傷を負いながらも砂漠の民に助けられて一命を取り止める。彼は北アフリカから移送されイングリッシュ・ペイシェントと呼ばれて、ドイツ軍の撤退したイタリア半島を北上している。途中、移動が無理と判断した従軍看護士ハナ(ジュリエット・ビノシュ)は町はずれの廃屋のような僧院にアルマシーと二人で残る。実質的に映画はここから始まる。キャサリンとの恋はこの僧院でのアルマシーの追憶だ。
ここへ、アルマシーの裏切りにより、ドイツ軍に拘束され、拷問により親指を失ったカラヴァッジョ(ウィレム・デフォー)が復讐のためにやってくる。さらに、爆弾処理の専門家インド人少尉のキップも僧院の庭にテントを構えて暮らす。この4人の奇妙な生活が映画の本筋で、恋物語はエピソードなのだ。キャサリンとアルマシーの恋物語は4人の僧院の暮らしの中で追憶されるため、どこまでもやるせなく輝く。