心の郷愁を誘うマーガレット・ワイズ・ブラウンの絵本 / My World

市立図書館で、ある作家の絵本を捜していたら、書棚からはみ出て落ちそうになっている一冊があった。押し戻してから、一瞬のあと、もう一度引っ張り出した。一目でこれが名作だと分かった。それもぼく好みの。借りて帰ってからネットで調べたらマーガレット・ワイズ・ブラウン(Margaret Wize Brown)は、大変に著名な絵本作家であることが分かった。しかし、聞いたことのある名前だと思ったら1月30日のブログに『ちいさなもみのき」を書いていた。それがマーガレット・ワイズ・ブラウンのストーリーだった。ぼくは絵がバーバラ・クーニのものはどれも絵本としての水準が高いので、バーバラばかりを気にしていたんだ。でも、『ちいさなもみのき」のお話はとても印象深くて、マーガレットの名前が少しだけ記憶されていたらしい。

本書『My World』はウサギの一家の物語。そう、ピーター・ラビットのようだが、絵がずいぶんと違う。一目見たら、絶対に忘れられない印象を残す強烈な絵だ。大胆な配色。なによりも驚くのは描かれた情景にシュールな沈黙を感じることだ。そこに、すごく感性を刺激される。

内容は、幼児向け。親が幼児に読み聞かせをするというより、親と幼児が遊ぶ絵本と言った方が正確かもしれない。感性の豊かな子なら、このシュールな沈黙の絵だからこそ、その絵に向かって饒舌に語りかけるのだと想像する。こんな絵本を使って、親と就寝前の遊びをできる子は幸せだと思う。

My toothbrush.
Daddy’s toothbursh.

My comb.
Mother’s comb.

本書の中の一節だ。本当の詩だよね。繰り返し読んでいたら、毎夜繰り返し、読んでもらっている母がいた。寝床から見上げる、その母の唇の動きをリアルに思い描いた・・・、というのは願望で、ぼくにはそんな経験はない。

My World
by Margaret Wise Brown
Pictures by Clement Hurd

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カテゴリー: 絵本