8人の女たち / フランソワ・オゾン監督の傑作ミュージカル映画

2002年フランス映画。フランソワ・オゾン監督の映画は最近、『海をみる』と『サマー・ドレス』そして『焼け石に水』を見ている。それぞれの作品に驚きがあって、すごい監督だと思った。本作の『8人の女たち』を見終わって、その思いは一段と強くなった。タイトル通り、8人の女たちだけの舞台のような密室劇。カメラは屋敷内から出ることはないが、まったく退屈しない。8人の女優たちは、みんな一度は踊って歌う。脈略無しに振りが始まり、歌い出す。その突拍子のないシーンがとてもいい。アメリカのミュージカル映画を見慣れた目からは、どうしようない違和感に襲われるはず。でも、これもミュージカルだと思う。

ぼくみたいな古い映画ファンには何と言ってもカトリーヌ・ドヌーブにつきる。彼女が歌って踊るだけで、もう感激一杯になった。ドヌーブには、特にルイス・ブニュエル監督の『昼顔』や『哀しみのトリスターナ』での強い印象をいまだに抱き続けている。ぼくにとって、透き通るような美と背徳が同居する女神のような存在だった。その高貴さは、このちょっと太目の『8人の女たち』からは想像ができない。

そのドヌーブとフランソワ・トリフォ監督の『日曜日が待ち遠しい!』の印象をやはりいまだに抱き続けているファニー・アルダンの絡むシーンはもうドキドキした。居間の床の上で取っ組み合いのけんかから、唇を寄せ合い脚を絡ませるなんて、見ていてのけぞってしまった。オゾン監督ってよーやるわ、というのが感想。ウイットに富んだ台詞も一杯で、面白いといったらない。実は今夜は2回目の鑑賞、見れば見るほどオシャレ度の高い作品であることが分かってくる。

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カテゴリー: Movie