2003年アメリカ映画。アリン・フルスカ監督。エミー・ロッサムはジョエル・シューマカー監督のミュージカル大作『オペラ座の怪人』のヒロインを演じるなど実力派の女優さんらしい。ぼくは全く知らなくて、見終わったあとにネットで調べたりして初めて知った。『NOLA~ニューヨークの歌声~』の方はそんな大作ではなくて、テレビドラマを見るように気楽に見られる、清潔なラブ・ロマンス。
ノラ(エミー・ロッサム)、18歳。義父とけんかしてカンザスからニューヨークに出て来る。カンザスって、ボストン・レッドソックスの松坂投手が大リーグ初登板した地だったり、最近見た『草原の輝き』の舞台だったりで、おー、またカンザスか・・・。『草原の輝き』では、エール大学に入った主人公が「カンザスってどこ?」と聞かれて、「アメリカの真ん中」といかにも答え慣れた返事をするのがおもしろかった。ちなみにジュディ・ガーランドの『オズの魔法使い』もカンザスが舞台。この映画の中でも『オズの魔法使い』をちょろっと話題にしたりする。ノラはニューヨークで作曲家になる夢を持っているが、まずは、ニューヨークにいるはずの実父を探すことが目的。
ニューヨークに着いた日は公園や路上でホームレスをするが、ダウンタウンの食堂の張り紙を見てウエイトレスに。朝の忙しい時で、即採用で、その瞬間からベテラン・ウエイトレスをやるところがすごい。ぼくも職場を転々としてた時は、初出勤の日でも半日も経てば電話を受けてたころを思い出す。コックの店長はおっさんで、助手はバイトの青年。彼はロースクールの学生で、弁護士を目指している。結局最後の最後にノラはこの青年への愛を告白するが、それまではずっと清いお友達を通す。ニューヨーク2日目からの数日は食堂の上にある青年の部屋で二人だけで寝泊まりするけど、なにもない。「ね、友だちでいるって、簡単だろ・・・」と青年が言う。
客の引いた午後の食堂でテーブルを片付けながら歌っているノラに関心を寄せる女性客がいた。結局、この歌がきっかけで、父親と出あうことになる。歌手志望の父親は19年前にカンザスへふらりと行ったそうだ。カンザスシチーの街はずれのバーで歌っていたのがノラの母親で、二人は恋に落ちて2週間を一緒にすごしたそうだ。女性客というのは実は食堂のオーナーで、本業は高級エスコートクラブの経営者だ。後で分かるノラの父親というのがボーイフレンドで、彼の歌を聞いたことがあるのだろう。このオーナー役メアリー・マクドネルはケビン・コスナーの『ダンス・ウィズ・ウルブズ』での印象が強い女優さん。本作でもとっても存在感がある。
ノラはオーナーに引き抜かれて、高級エスコートクラブで秘書をやる。てきぱきと顧客からの電話をさばいたり、有能ぶりを発揮するが、事件にまきこまれて、それをバイトの青年が弁護士として活躍したり、いろいろあって、目出たし目出たしなんだけど、父親に会うまでが、とにあくいろいろあって、そんなうまい具合にいくかよ~的な展開だけど、ま、気楽に見ればいい映画なのでかまわない。最後、ノラのピアノ弾き語りが聞かせる。