ブロンテ姉妹 / 「ジェイン・エア」「嵐が丘」の作家を描くアンドレ・テシネ監督作品

1977年、フランス映画。アンドレ・テシネ監督作品を集中して見ていたが、ぼくが初めてテシネ作品に出会うのは『海辺のホテルにて』(1981年)だった。映画館では上映されず、大きなホールでの1日限りの上映だったと記憶している。内容の記憶はすでにないが、すごく感動したことだけは覚えている。『ブロンテ姉妹』はその前の作品で、最近見ているものから20年以上も前の映画だ。

映画は最初から最後まで陰鬱な映像が支配している。風景も痩せた土地が連なる丘に寒々とした風が吹きすさんでいる。主人公たちの住まいである牧師館もひどく質素で、見るからに気の滅入る暮らしぶりだ。牧師の父とともに、シャーロット、エミリー、アンの世界文学史上名高い3人の姉妹と、ただ一人の息子のブランウェルが暮らしている。母は亡くなっていて、伯母が一家のめんどうを見ている。

映像表現は古風だが、カットは素早く斬新で、ストーリーが手早く進んでいくので、ブロンテ姉妹のことを多少なりとも知っていなければ、話しを追うのは難しい。ぼくは、エミリー・ブロンテが『嵐が丘』を書いたことぐらいしか知識がなかったので、展開に不明な箇所が少なからずあった。

三姉妹は詩を書いているが、発表する意図はない。息子のブランウェルには画才があり、一家の期待を集めている。しかし、家庭教師先の夫人とのスキャンダル後、身を持ち崩して死んでしまう。その後、三姉妹はついに作品を世に出し、シャーロットの『ジェイン・エア』が評判を呼ぶ。エミリーは詩集の次に『嵐が丘』を出版するが、すぐに、作品を認められることなく病気で亡くなる。続いてアンも病死する。

映画の最後は年月が過ぎ、流行作家となっているシャーロットは夫とともに出版社の招待で、オペラハウスへ出かける。このシーンはすごい。オペラハウスの前は次々と到着する馬車を激しく炎を上げるたいまつを持った男たちが、ある者は馬車を待ち、ある者は馬車から降りた着飾った貴族たちを先導している。馬車の上にもたいまつがたてられ、オベラ劇場前の広場は無数のたいまつが動き回っている。オペラ観劇の意味するスケールの大きさを伝えている。

舞台に目をやりながら、シャーロットには連なる丘を走り回るエミリーの声が聞こえている。三姉妹の中でも際立ってエキセントリックなエミリーをイザベル・アジャーニが扮している。アジャーニがむちゃくちゃにいい。『嵐が丘』誕生の現場を見る思いだった。アンドレ・テシネ監督はエミリーに、三姉妹に寄り添って映画を作っているようだ。一度みただけでは、それがなぜなのか理解できなかった。

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カテゴリー: Movie