2004年アメリカ映画、トッド・ウィリアムズ監督。とても充実した内容のある映画。しかしシリアスすぎて、見終わっても寝られそうない。自分で絵も描く有名作家テッド(ジェフ・ブリッジス)と妻のマリアン(キム・ベイシンガー)は4歳の娘ルース(エル・ファニング)とロング・アイランドで裕福に暮らしている。しかし、夫婦は二人の息子を事故で失って以来、立ち直れないでいる。マリアンは事故後にもうけた娘ルースを愛してはいるが、生むべきでなかったと後悔している。マリアンの心は20歳と17歳で逝った二人の息子の思い出に占められている。
テッドは作家志望の高校生エディ(ジョン・フォスター)を一夏、助手として雇う。エディはフェリー着き場まで迎えにきたマリアンに憧れる。マリアンは別居しているので、普段は家にいない。ある日、エディはマリアンの下着をベットに並べ、その前でオナニーをしている。その部屋へマリアンが知らずに入ってくる。気まずい関係にさせまいと、この件は笑って終わりにしようと彼女は提案する。
しかし、エディのマリアンに対する憧れは続く。マリアンはエディの中に失った兄弟の下の息子を見るようになる。マリアンはエディに言う。兄の方は経験があったと思う。弟はシャイだったから、まだなかったと思う。エディ、あなたは経験があるのかと聞く。エディはないと答える。そしてマリアンはエディを誘う。
一夏、マリアンとエディは何度も何度もベッドを共にするが、次第にマリアンのセックスへの打ち込みようは度を超えていく。テッドも長く続いたモデルとの浮気が破局する。4歳にしてエキセントリックな幼女ルースの存在が非常に重い。夏も終わる頃、マリアンは何も言わずにロング・アイランドを出て行く。すでに二人の関係を知ってるテッドにエディはあえて告白して、首にされる。
旅立つ前夜、エディの寝室に入ってきたテッドは、ベッドに腰をおろして暗闇の中で、二人の息子の事故の詳細を語って聞かせる。とても衝撃的な内容で、これでは立ち直れなくてもしかたがないと思える。翌朝、立ち去るエディに、テッドは、君は息子に似ていたから、マリアンのために雇ったのだと言う。そして、作品の細部は具体的に、とアドバイスする。
テッドの告白はムチャ、ショッキングだった。いったい、マリアンがエディに求めたものは・・・。しかし、マリアンは立ち直るきっかけをエディから得た。映画の中から前向きなストーリーを楽しめばいい。
マリアンを演じるキム・ベイシンガーがムチャクチャにいい。ぼくは、彼女がセクシー女優として登場した『ナインハーフ』(1985年)を封切りで見ている。『ナチュラル』(84年)も『フール・フォア・ラブ』(86年)も初期のものはたいてい見ている。でも、好きになれない女優だった。久しぶりに見た『L.A.コンフィデンシャル』(97年)も好きになれなかった。しかし、『8 Mile』(02年)でヒップ・ホッパーの母親で出てきた時は、びっくりするほど良かった。さらにこの『ドア・イン・ザ・フロア』では、もっと良かった。
原作はジョン・アーヴィング、昔、むかしに『ガープの世界』と『ホテル・ニューハンプシャー』を見た記憶があるが、内容は覚えていない。『ドア・イン・ザ・フロア』のテッドは作家本人がモデルなのだろうか。劇中、プロジェクターを使った絵本の朗読がある。ぼくにはなじめない内容だった。エディに作品創作の蘊蓄を語るシーンは、なるほどと感心した。テッドはエディの作品評の中で、最後の主人公の死はとってつけたようだと酷評する。この映画のラストシーンも取ってつけたようでシラケた。でも、このシーンがなければドア・イン・ザ・フロアにならないし・・・。