native の中村智由氏のサウンドにぼくは2005年に初めて聞いた時から日本的なテイストを感じている。ジャズの中に日本のメロディーを挿入するといった話しとは違う。日本人的な要素を解体しても、最後に残っている日本人がパフォーマンスの高揚の一瞬に顔を覗かせるといったものだ。もうこれ以上は解体できないコアな部分に日本人的なものがどうしても潜んでいるのだと思う。表現の極限に思わず顔を出すのこの日本的なサウンドをぼくは心地よく思っている。
ニクラスとユッカにもヨーロッパのそういうサウンドを感じる。それを「絵画のような北欧の景色・・・」などと表現しては陳腐なだけだ。ヨーロッパ・ルネッサンスから脈々と生き続ける精神性があるんだ。だからこそ、この夜の中村氏はいつになく、日本的なテイストが強く出て来たのかもしれない。そのステージをじっと聞いていたニクラスとユッカはそこに反応したんだと思う。その反応はアンコール曲に参加するというカタチに現れて、客席を湧かせた。
nativeに合流した二人は、ヨーロッパ対日本という対立ではなくて、native のサウンドを即興=作曲した。彼らのソロを受けた最後の中村氏のソロから不思議と日本的なテイストは消えていた。そこに、モダンジャズの原点、ハード・バップなインプロヴィゼーションを聞いて感動した。これは、ちょっとないライブ体験だった。
NWQ specia session でもプレイした native の杉丸太一ピアニストの二つのセッションでのプレイにも強い印象が残ったことを記憶しておきたい。それと、DJ岡野豊とDJ若林広繁の二人の創り出すサウンド空間もとても行けてた。native で全てのライブが終わっても、しばらく余韻を楽しんだがDJ岡野はこの夜のジャズサウンドを殺さない、粋でちょっとアヴァンギャルドな音源の中にポップなサウンドを忍ばせたり、うん、良かった。とてもいい夜だった。