1974年フランス映画。夭折の天才監督ジャン・ユスターシュの自伝的映画で、最後の作品。ユスターシュは1981年にピストル自殺をしている。13才の少年を主人公に、特にストーリーと呼べるような展開もなく、淡々と綴られていく映像だが、テンションが高い。見終わって疲れたが同時に映画を見た充足感にもひたった。夭折の天才監督の作品としか言いようがない。
フランソワ・トリュフォー監督の自伝的映画『大人は判ってくれない』(1959年)を思い出す。どちらもすごい作品だと思う。時代が違うので比較できないが、トリュフォーはヌーヴェルヴァーグの古典として見てしまうが、ユスターシュは現代の映画なのでインパクトは強い。
極端に会話のない映画だ。それが映像に緊迫感を生じさせる。往々にして会話が途絶えてストレスに耐えられなくて、ついおしゃべりになってしまうが、この映画ではそういうことはない。女の子をナンパして、彼女からどうして喋らないのかと言われる。彼は何を話していいのか分からない。よくもこれだけ緊迫した映像が撮れたものだと思う。
13才の少年ダニエル(マルティン・レーブ)は田舎の町で祖母と二人で暮らしている。ある日、母がやってきて一緒に暮らすことになる。母は離れた地方都市で男と同棲している。男はダニエルを歓迎していない。生活も苦しく、高校へ行かせてもらえず、バイクの修理なんかもする工具店で働く。仕事のない時は近所のカフェにたむろする年上の少年たちと過ごしている。慣れない手つきでタバコを吸ったり、キスの仕方を話題にしたり、とにかくやることなすことが痛々しい。自分の過去を冷徹に見つめる残酷な映画だと思う。少年時代になんか戻りたくない。監督はそういうタイプの人間に違いない。
最後に、少年ダニエルの美しいことといったら半端じゃない。