絵本 もうひとつの日本の歴史 / 差別社会ができる過程をやさしく説明

大型の絵本の見開き一杯に風景が描かれているが、原則的に同じ場所だ。その風景が5~6世紀の古代社会から始まって、現代までの変遷となっている。絵は柔らかいタッチだが、人々の暮らしが精密に描かれているので、丹念に絵を見ていて飽きない。ここに描かれている絵は、差別はなぜ生じるのか、という素朴な疑問に分かりやすく答えていると思う。

貧富の差による差別は原因として分かりやすいが、本書では特殊技能者への差別意識を特に分かりやすく説明している。中世や戦国時代から、化学変化を駆使した高度な技術を使うさまざまな職人が誕生する。しかし、その技術を理解できない人々は、「穢れ(けがれ)」に触れる存在とみなして特別視し、そこに差別が生じるという説明には、なるほどなーと思った。ぼくも写植オペレータという一種の職人を長いことしてきた。切磋琢磨して自分なりに高度な技術を身につけたが、「職人さん」と言われるとき、そこに何とも表現しがたいニュアンスが、ときにはあることを感じてきた。ぼく自身、ホワイトカラーが職業として標準というか望むべき職種という価値観で育っているので、余計にこのニュアンスには敏感だった。

巻末には本文の大きな絵の縮小版を使ってより詳しい説明が加えられている。明治政府になって、差別の名称が廃止されるが、差別は根強く残り1922年「全国水平社」が結成される。第2次大戦で焼け野原となった後も、復興の過程で差別が顕在化する原因も分かる。本書はとても大きな絵、丹念に描き込まれた人々の生活、親しみやすい淡い色彩などから、差別の本質を伝えていると思う。そして差別のない社会の実現が本書のスタンスだ。

絵本 もうひとつの日本の歴史
文 中尾健次
絵 西村繁男
発行 解放出版社、2007年10月

投稿日:
カテゴリー: 絵本