地下室のメロディー / アラン・ドロンが不良役にぴったりはまった犯罪映画

1963年フランス映画、アンリ・ヴェルヌイユ監督。完全犯罪と思ったらちょっとしたミスから失敗に終わるというのが犯罪映画の定石。終わり方を劇的に盛り上げることに制作者は知恵を絞っている。この映画も犯行計画でまず盛り上げて、犯行の実行でハラハラドキドキさせて、あとはどんなミスをするんか楽しんで見ることのできる、上質の犯罪映画ではあるんだけど、終わり方にちょっと無理があるように感じた。

この映画はストーリーの他にジャン・ギャバンとアラン・ドロンを見ているだけでも満足できる。ギャバンの渋い演技は見る価値が大きい。それ以上に、貧乏人の不良がここでもぴったりとハマっているアラン・ドロンがムチャクチャにいい。

アラン・ドロンだけが、犯行場所のリヴィエラに先に入って、高級ホテルに宿泊する。親分のジャン・ギャバンから金持ちのお坊ちゃんに見える策をいろいろと指示される。これが可笑しくて笑ってしまう。アラン・ドロンが犯罪のために引っ掛ける踊り子が、カルラ・マルリエ。ルイ・マル監督の『地下鉄のザジ』で神秘的な存在だった、主人公ザジの美しいおばさんだ。

『地下鉄のザジ』は40年以上も前の高校生の時に見ていて、カルタ・マルリエがまぶたに焼き付いている。もしも、当時この『地下室のメロディー』を見ていたとしても、カルタ・マルリエなんていう女優は記憶に残るはずがないと思う。当時のぼくは少ない小遣いからルキノ・ヴィスコンティ監督などイタリアン・ネオリアリズム映画やジャン・リュック・ゴダールやルイ・マルのヌーヴェルヴァーグ映画を見るのに夢中だった。そんなわけで、当時は評判だった『地下室のメロディー』を見ていない。今はテレビ放映で気軽に見られるのがうれしい。

タイトルバックに近代建築のビルを鋭利に切り取った映像、モダンジャズ風な音楽など、当時は随分とおしゃれだったに違いない。でも、同じ時代のヌーヴェルヴァーグ映画と比較するなら、おしゃれの質が違うようだ。ヌーヴェルヴァーグは今に通じるおしゃれだが、『地下室のメロディー』のおしゃれは今となっては色あせている。

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カテゴリー: Movie