ドロドロ戦争 / ベアトリーチェ・マジーニ(イタリア)の児童文学

4人仲間の唯一の女の子のステッラがいなくなっるところから物語が始まる。残った3人はドロドロがさらっていったに違いないと思い込んでいる。4人は始めからの仲良し4人組だったわけではない。学校ではいじめる側といじめられる側の子だっている。きっかけはストッピーノがツリーハウスを持ちたいと夢見るが、街中にそんな大木があるわけがない。あきらめていたところに、彼らが後に「屋敷裏の空き地」と呼ぶことになる、路が袋小路になったゴミためのような場所を見つける。ストッピーノはそこに秘密の小屋を一人で作り始める。その小屋作りを見ていたモカッサがいつの間にか手伝い初め、次に同じようにオットが加わった。3人は学校でも地域でも友だちでもなんでもないところがとておもしろい。

秘密の小屋が完成すると3人の秘密の党みたいになった。ストッピーノはこの遊びをもっと本格的なものにしようと考えて、すぐに幼稚園が同じだったが今は疎遠になっているステッラという女の子が頭に浮かぶ。ステッラは学校でもとびっきり可愛い女の子だけど、ふつの女の子のようにマニュキアとかきれいな服や靴でおしゃれをすることと無縁な女の子。いつもジーンズで、長い黒髪をお下げにまとめていたので、「インディアン娘』を縮めてインディーと呼ばれていた。

ストッピーノが提案するとモカッサは顔をまっかにし、オットはクラスの大部分の男の子たちと同じように、ステッラにあこがれていたので一も二もなく賛成した。ステッラは一応下見をしてから返事をするということで秘密の小屋にやってくる。「ここに、色を塗った果物箱をおいたらどうかしら。腰掛けにもなるし、わたしたちのものを入れておくこともできるでしょ」。

「わたしたち・・・」と聞いて3人の男の子たちは有頂天になる。ま、男の子は単純だ。4人は秘密の小屋での遊びを楽しんでいたが、長くは続かなかった。かられが「ドロドロ』と呼ぶ得体の知れない生き物に付き回されるようになったからだ。ドロドロとは地中やゴミの中で生きている生物で、知性を持っている。ゴミを食べて堆肥にするという自然循環の中の重要な地位にあるのだが、街を牛耳るゴミ清掃会社の資本家がドロドロを利用して利権を得ている。

実は、ステッラがいなくなったのは、ドロドロと資本家の戦いに巻き込まれたからだった。そんな時、ホームレスのファラフィルが現れて、4人組の秘密の小屋を入り込んでしまう。いろいろあったけどファラフィルの知恵なくしてやって行けない事を知った3人の男の子はこのホームレスと協力して、ステッラを探し始める。その過程でゴミ清掃会社の資本家の悪巧みが明らかになっていく。最後は全てが解決し、清掃会社も資本家が変わって、ドロドロとの友好関係の元、環境にかなったゴミ処理システムを構築する。

本書は「イタリアからのおくりもの――5つのちいさなファンタジア」というシリーズの一冊として刊行された。

●イタリアからのおくりもの――5つのちいさなファンタジア
木の上の家 / ビアンカ・ピッツォルノ
空に浮かんだ大きなケーキ / ジャンニ・ロダーリ
ベネチア人にしっぽがはえた日 / アンドレア・モレジーニ
ドロドロ戦争 / ベアロリーチェ・マジーニ(本書)
ロベルト・ピウミーニ / アマチェム星のセーメ

ドロドロ戦争
作 ベアトリーチェ・マジーニ
訳 長野 徹
絵 アドリアーノ・ゴン
発行 汐文社、2007年1月

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カテゴリー: 読書