ローマのニュータウンで起きたお話。ある朝、ニュータウンの上空に巨大な円形の物体が浮遊している。警察、消防署そして軍隊も出動する大騒ぎになる。火星人が空飛ぶ円盤で襲来したというわけだ。パオロとリタというヤンチャな幼い兄妹がいて、その円盤の正体がケーキだってことを最初に見つけてしまうお話。それで、最後は大勢の子どもたちがやってきて、そのケーキを食べてしまうというんだ。なんで、ケーキが上空を浮遊してるかと言えば、科学者が新しい原子爆弾を作って実験したらキノコ雲がケーキになったというんだ。
まったく、論理的でないよね。バルカン星人が聞いたら怒るよ。バルカン星人でなくたって、こんな話しを大人がするか・・・。そう思いながら結局最後まで読んでしまったけど、これは、ローマのトゥルッコというニュータウンにある小学校で、4年生を終えたクラスの子どもたちと一緒に作ったお話だと書いてあった。それで、納得。1964年のことで、その年に新聞に連載されたそうだ。とにかく、ほとんどが会話の小説。イタリア映画のやかましいぐらいの早口を想像してしまう。
日本では1970年に安藤美起夫氏の翻訳で講談社から出版されたが、今回、「イタリアからのおくりもの――5つのちいさなファンタジア」というシリーズの一冊として新たに翻訳されたもの。挿絵も可愛い。
●イタリアからのおくりもの――5つのちいさなファンタジア
木の上の家 / ビアンカ・ピッツォルノ
空に浮かんだ大きなケーキ / ジャンニ・ロダーリ(本書)
ベネチア人にしっぽがはえた日 / アンドレア・モレジーニ
ドロドロ戦争 / ベアロリーチェ・マジーニ
ロベルト・ピウミーニ / アマチェム星のセーメ
空に浮かんだ大きなケーキ
作 ジャンニ・ロダーニ
訳 よしとみ あや
絵 井川ゆり子
発行 汐文社、2006年9月