トニー・ロスの妖精の絵本/A Fairy Tale

トニー・ロスの絵本は、マンガのようなタッチでユーモラスな動物たちが登場するものが多い。本書はちょっと違う。人間の物語だし、絵のタッチだっていつもと違う。大変な力作なんじゃないかとぼくは思っている。とある街に Bessie という女の子が住んでいる。その街は、雲が低くたなびき、林立する工場の煙突からは黒い煙が絶えることがない。そんな陰気な街で少女は隣に住む老女の Leaf と友だちになる。Bessie は学校を出て、工場に就職し、恋をしても Leaf とは友だちだった。夫は第二次大戦で出兵し、帰らぬ人になったが、Leaf とは相変わらず友だちだ。その後もずっと・・・。妖精の話は嫌いじゃない。それほど詳しいわけではないが、妖精の物語は長い間、読み続いている。本書のような妖精の絵本に出会うと、やっぱりいいなと思う。『指輪物語』とか『ライオンと魔女』みたいな大作もいいけど、そんな仰々しさとは無縁な本書のような絵本はかけがえがない。妖精は知らない間に、そこに居る・・・という、さりげないところがとてもいい。

A Fairy Tale
(c) 1991 by Tony Ross

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カテゴリー: 絵本