赤羽末吉の鬼の傑作絵本/鬼のうで

鬼が切られた腕を取り戻しにくる話。そういう鬼の話は「御伽草紙」や「太平記」などに見られるそうで、本書はそうした古典をもとに著者が絵本化したもの。絵も文も著者によるものだが、その両方共、なみなみならない力が注がれている力作。絵本が絵と文で構成された一冊の本という先入観から見るなら、本書はとてもアヴァンギャルドな絵本だと思う。絵巻物を連想させる、一ページ一ページのデザインの懲りようが紙面から伝わってくる。それていて、絵本全体を覆うシンプルな整合性が心地よい。デザインの素養を磨くのに絵本の活用が言われることはよくあるが、本書はそうした活用にも大変役立つはずだ。

鬼のうで
文と絵 赤羽末吉
1976年12月 偕成社発行

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カテゴリー: 絵本