リー・モーガン/ザ・サイドワインダー(4157)

本アルバムは発売当時、すごい人気で、一時はどこに行ってもこのメロディーを耳にするのでイヤになり、全く聞くことはなくなった。40年ぶりに聞いたみたら、案外いいじゃん、となった。1960年代の中頃、ぼくは高校を卒業してサッポロで事務職の仕事をしていた。職場の連中と飲み歩くほか、大学生になった中学や高校の同級生がサッポロには大勢いた。お金がなくなると、かれらの下宿や寮に酒を持ってしけこんだ。中にはススキノに、なじみの店を持ってる大学生もいた。だれかれとなく会っていたぼくだが、休日などはあえて一人で街をあるいていた。特にこんなゴールデンウィークのようなときにはそうだった。そんな、ある日の日暮れ時、ススキノの大通りに面した、ジャズを流している大きめの明かるいカフェでこのレコードを初めて聞いた。

時代はフリー・ジャズに向かっていて、ぼくもジョン・コルトレーン、アルバート・アイラー、アーチー・シェップなんかを聞く頭でっかちをやりはじめていたので、なんだこの通俗的なサウンドは、と思ったに違いない。あの時、このレコードジャケットをはじめて見て、脳裏に焼き付いてしまったことを今でも覚えている。

それからは、一人でサッポロの街をあてもなく歩くときはこのトランペットの音色がぼくのバックに響いていた。ジョン・カサベテス監督の映画「アメリカの影」のラストで、主人公の黒人青年がパーティから逃げ出して、ニューヨークの街をさまよう。その青年の焦燥感とかいら立ちをバックに流れるトランペットのジャズが表現していた。ま、こんな感じだった。ぼくがサッポロを出たのはそれから少し経ってからだった。このアルバムが背中を押したかな・・・、と今になって思った。

リー・モーガンとテナーサックスのジョー・ヘンダーソンのポジティブなサウンドがいい。リー・モーガンはブルーノートから13枚もアルバムをリリースしている。「ザ・サイドワインダー」は8作目。なお、1500番台は6枚。ジョー・ヘンダーソンのブルーノート版は5枚。全て4000番台。

The Sidewinder Lee Morgan
Blue Note 4157
Lee Morgan trumpet
Joe Henderson tenor sax
Barry Harris piano
Bob Cranshaw bass
Billy Higgins drums
on December 21, 1963

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カテゴリー: Music