カミさんが白内障手術

カミさんが入院して3日目の朝、やっとシャワーを浴びる元気がでて全身を入念に洗い、エッセンシャルオイルの自分でブレンドしたもので全身をマッサージして、下着から全部、洗濯したての清潔なものに変えたらほんとうに気分がリフレッシュした。実はこれは、入院前のカミさんにぼくが毎朝していることだ。そう、カミさんは自分で体を洗うこともできなければ、おしっこさえもう一人でできない体だ。紙パンツを使っているので、毎朝入念に体を洗わなければならない。そしてよい香りのするオイルで体をマッサージしている。

26日、白内障手術を受けるカミさんを無事に入院させることができた。それまでの2週間ばかり、何回もの検査や事務手続き、病室に持参するものを買い揃えるなどぼくはてんてこまいだった。入院させて肩の荷が下りたようにホッとした。しかし、家に帰って襲われた興奮状態をともなう感情は普通でなく、記憶しておかねばと思いつつも、すでに記憶はうすれて適切に表現できない。

翌27日はしんどくて寝続けた。介護者が倒れるとはよく耳にするが、これを実感する疲れ具合だった。介護を続けているときは緊張状態なので、自分の疲れが実感できてないに違いない。恐ろしいことだと思う。入院中の数日間は、あそこも行きたい、ここも行きたいとカフェやバーを思っていたが、とてもじゃないが出歩く元気はない。今日28日、近所の整体師のところへ行っただけだ。

本人の体は日に日に弱体化している。最初に連れて行った眼科医からは手術をしなければならないだろうが、体力的に今がラストチャンスだろう、と言われた。本人もそのことを自覚しているので、わたしたち二人は相当な覚悟で今回の手術に臨んでいる。白内障だけでなく、緑内障もずいぶんと進行しているが、眼球の構造的な欠陥からきているらしく、診断した医師からも難易度の高い手術になるだろうと言われた。ぼくは、もう何が起きても怖くないさ、まな板の鯉のつもりで手術台に上がってこいよ、とお互い笑って病棟で別れた。病院はコロナ禍で神経質なぐらい家族との面会を禁止している。治療が終わるまで会えない。

紙パンツの常時使用もこの1ヶ月ぐらいからのことだ。だから、2ヶ月前はぼくがスーパーの婦人用品売り場へショーツを買いに行っていた。カミさんが自分で買いに行けなくなって長いのでショーツの替えが無くなっていた。古いのがLサイズだったの同じものを買った。ところが本人が窮屈だと言う。古いのは何度も洗濯を繰り返しているので同じエルでも伸びてるんだよ、と言っても新品が伸びるの待つわけにいかない。スーパーにLLサイズの在庫は少ない。ぼくはあるだけのLLを何枚も買って帰った。それからすぐに紙パンツだもんな。新品のLLショーツがたくさん残っている。今度は入院にあたって同じ売り場でレギンスや肌着のシャツも何枚も買った。レギンスなど、背の低いカミさんに長すぎないだろうか、ぼくの脚にあてて入念に検討したりしているので、もう売り場のスタッフの注意を引いているかもとヒヤヒヤだよ(笑)。

ショーツや紙パンツの上げ下げ、着替えなど幸いなことに夫婦だからできることだろう。母親だったらできないに違いない。母親だったら、介護施設にやっかいになるということになるんだろうか。年齢的にはそれも不思議じゃない。2年前、デイケアに週に2回通ったのは、ぼくの説得によるものだった。本人はイヤだったがぼくの説得を受け入れたカタチだ。おかげで本人はとてもイヤな思いをした。今でもそのことではぼくに批判的だ。ぼくも後悔している。デイケアの経験以来、カミさんは精神的にも肉体的にも弱体化が加速したように見える。何であれ、介護のことでもうぼくは説得する気にはなれない。おとなしく紙パンツを取り替えるだけの夫だよ。