1955年アラバマ州のバスボイコット事件を描いた絵本 / ローザ

ローザ
ローザ

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ニッキ ジョヴァンニ
光村教育図書
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人種差別の激しかったアメリカ南部のアラバマ州で白人に席を譲ることを拒否した黒人女性ローザ・バークスが逮捕される。1955年12月1日のことで、彼女の逮捕をきっかけに1年間にわたるバス・ボイコット運動が展開される。翌年、最高裁判所がバス車内における人種分離は違憲との判決を出し、それをきっかけに南部諸州で黒人の反差別運動が盛上がる。これが公民権運動と呼ばれる。

ぼくが中学生から高校生にかけての多感な時のことで、公民権運動は年とともに激化していった。それが連日のように新聞の誌面に大きな写真と共に載り、テレビニュースでも報じられる。そのうちベトナム戦争も始まり、両者は忘れられないアメリカの歴史となった。

この絵本は事件の当日55年12月1日の朝から始まる。ローザ・パークスはアラバマ州の都会の百貨店で服の仕立てや修理を担当する腕のいい職人。夫と母との朝食後、家を出てバス停留所に向かう。当時のアメリカでの黒人のバスの乗車の仕方が具体的に描かれている。その車内で白人客に席を譲ることを拒否した彼女は逮捕される。

すぐに、女性政治会議の女性たちが集まり活動を開始する。この組織がバス・ボイコット運動事件を世間にひろめることになった。ついには女性政治会議をはじめ、全米黒人地位向上協会、すべての宗派の教会が集まり、ここで選ばれたリーダーが有名なキング牧師というわけ。キング牧師のもと、バス・ボイコット運動は続き、ローザが逮捕されてから1年間近くがすぎて、最高裁判所がバスの席を人種で分けることを違法とするまでが、絵本に描かれている。

この絵本の素晴らしさは、歴史書というだけではない。実は絵が素晴らしい。ぼくはどちらかというと絵の方に惹かれた。コラージュを大胆に取り入得れた絵で、不思議なリアリティをかもしだしている。社会性のある内容だからこそ、だれもが安心できる平凡な絵を使うのではなく、アート的に斬新な新しいを絵をもってくるところに、単に社会正義を訴えるだではない、何か力強いものを感じる。

それは本書だけというわけではない。2002年に国土社から出版された『とどまることなく-奴隷解放につくした黒人女性ソジャーナ・トゥルース』(アン・ロックウェル作、グレゴリー・クリスティー絵)はリンカーン大統領時代の実話にもとづく絵本だが、これもまた素晴らしく大胆な構図と色使いの絵が使用されていた。

ローザ
文 ニッキ・ジョヴァンニ
絵 ブライアン・コリアー
訳 さくまゆみこ
発行 光村教育図書、2007年5月

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カテゴリー: 絵本