細野ビルヂングの66展V

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大阪西区新町4丁目の細野ビルヂング恒例の66展(ろくろくてん)が昨日から始まった。今回が5回目。初日のスタートはいつも6月6日午後6時6分6秒と決まっている。細野ビルヂングは1936年に竣工された細野組の本社屋だったものが、戦後は全館がテナントビルとして利用されていた。2000年頃、1階フロアーが空いたのをきっかけに、現在のオーナーである細野組三代目細野房雄氏の孤軍奮闘によるビル改修が始まった。この改修工事は2階に空き室ができるなどで、現在も継続中。改修後の、または改修中の部屋はアートの発信スペースに利用されている。その始まりが、2003年6月の第1回66展だった。

66展(ろくろくてん)のネーミングは、芦屋の高級住宅地として知られる「六麓荘」(ろくろくそう)にちなんでいる。六麓荘は一般的には電鉄会社の宅地開発として知られているが、現オーナーの祖父にあたる細野濱吉氏が宅地造成を行って開発したもの。現在でも道路の配置や石垣に濱吉氏の緻密な設計思想を見ることができるそうだ。66展のネーミングは3台目オーナーの濱吉氏への敬意の現れなのだ。

戦前の細野組は名だたる橋梁、トンネル、御堂筋などの道路工事に携わり、事業活動は国内各地に留まらず、中国大陸や朝鮮半島にも及んだという。その活動の中心が第二次大戦末期のアメリカ軍の大空襲にも奇跡的に生き延びた現在の細野ビルヂングだった。創建当時のモダニズムなデザインは壁面の曲線などに痕跡を残しており、人目をひく建物となっている。現在はコンクリート地の壁面もかつてはタイル張りだっというから今よりもはるかに華麗な姿だったに違いない。

66展には多数のアーティストが作品を持参して2階や地下室のスペースを埋めている。常にオープンなビルだが、66展の期間中は特に気軽に入れるので、興味のお持ちの方はぜひ、入場してビル見学をされることを勧めます。6月12日まで、地図などは「細野ビルヂング情報サイト」で。

初日だけのオープニングイベントには多数のパフォーマーとお客が集まり、ワインが振る舞われた。お客は若い人が主体だが、近所の親子連れからお年寄りまで多彩。手伝う人たちも自然発生的な感じて動いている。ちょっと他では見られない異空間が出現している。それは地域とネットの融合が創り出すコミュニティがカタチとなって現れた空間じゃないかと思っている。mixiの動きもオーナーの関知しないところで始まっていた。実は、ぼくもビルの修復をしているオーナーの孤軍奮闘の姿に触発されて、上記の「細野ビルヂング情報サイト」を立ち上げた。細野ビルヂングを見ていると、参加したくなる誘惑にかられる不思議な建物だ。

細野組の業績も徐々にマスコミに知られるようになり、最近も「建築ジャーナル」誌5月号にオーナーのインタビューが載ったばかりだ。新聞各紙の地方欄には何回も登場している。