先日『トレインスポッティング』(1996年ダニー・ボイル監督)を見ていたら、「ルー・リードは昔は良かったけど、いまはあんまりよくない・・・」みたいな会話があった。ルー・リードのムカシって、ベルベット・アンダーグラウンドを指すのだろうか。今、フィリップ・ガレルの映画『秘密の子供』(1979)を見終わって、ほとんど10年ぐらいは聞いていないCD『The Velvet Underground & Nico』を聞いている。たぶん、映画の影響だろう、ほんとにいい。
ニコの歌声が聞こえている。ベルベット・アンダーグラウンドやニコはアンディ・ウォーホルのファクトリーから生まれたアーティストたち。ぼくは1978年、阿木譲氏の『ロックマガジン』の付録のコミックでベルベット・アンダーグラウンドを知る。それはもう手元にはないので、記憶をたどるしかないが、ルー・リードとジョン・ケイルが出会い、ベルベット・アンダーグラウンドを結成するまでのコミックだったような気がする。
ジャン=リュック・ゴダールの再来と呼ばれたフランス人フィリップ・ガレルはウォーホルのファクトリーと接触後、ニコと出会い恋をする。『秘密の子供』はニコとの愛の破局後に記憶の糸をつむぐように制作された映画だ。ストーリーらしいストーリーはない。ときにサイレント映画の『裁かるゝジャンヌ』(1928年カール・ドライアー監督)を思わせる映像が淡々とつづく。無音が長く続いたり、すばらしく美しい音楽が入るときもある。非常に凝縮された濃密な時間が流れるので、それを手でつかもうとすれば、その感触が得られと錯覚するほどだった。
当初はニコ自身の出演で企画されたらしい。しかし、映画でニコ役をしているのは、ゴダール監督の『中国女』のアンヌ・ヴァアゼムスキー。彼女の演技が素晴らしい。