木の上の家 / ビアンカ・ピツォルノの児童文学

奇想天外なお話で、ちょっと付いて行けない感じ。これが昔々、とかだったら、ま、いいか、なんだけど、マンション住まいに飽きたから木の上で暮らすことになったというお話だから、付いて行けない。でも、だからおもしろい。

8才の女の子アグライアとおとなの女性ビアンカは大きなカシの木の上に家を造って住んでいる。都会のマンション暮らしが嫌になったので、野原の真ん中にそびえるカシの木を選んだわけ。庭の木の上にちょっとしたスペースを作って遊んだという、よくある話ではない。バスもトイレも水も完備した住まいなんだ。電気は? 魚のシビレエイを飼っててね、そのコンセントをくわえさせるんだよ。こんな風にウソっぽい話しが、次から次へと連なって一遍の小説になってる。これがイタリアか、と文化の違いを痛感する。

ケガしたコウノトリが舞い降りてきて、荷物をもってる。ひょっとして、あれかなと思ったら正解。あれだよ。赤ん坊。8才の女の子アグライアが「赤ちゃんは、お母さんが産むことくらい、石ころだってしってるわ」。コウノトリが応える、「へぇー、そうなのぼくたちはしらなかったよ」だって。おもしろいねー。結局、三羽のコウノトリが運んでた4人の赤ちゃんを引き取り、母さんイヌが乳をやって育てる。なんか、もう無茶苦茶だけど、読み出したら止められない。

著者は1942年イタリア・サルデーニャ島の生まれ。作品は低学年向きからティーンエイジャー向きまで幅広く、本作は1984年に発表された作品。汐文社の「イタリアからのおくりもの――5つのちいさなファンタジア」の中の一冊。

●イタリアからのおくりもの――5つのちいさなファンタジア
木の上の家 / ビアンカ・ピッツォルノ(本書)
空に浮かんだ大きなケーキ / ジャンニ・ロダーリ
ベネチア人にしっぽがはえた日 / アンドレア・モレジーニ
ドロドロ戦争 / ベアロリーチェ・マジーニ
ロベルト・ピウミーニ / アマチェム星のセーメ
木の上の家
著者 ビアンカ・ピツォルノ
翻訳 長野徹
絵 クェンティン・ブレイク
発行 汐文社、2006年5月

投稿日:
カテゴリー: 読書