Adobe Illustrator(アドビ イラストレータ)の思い出

1175766216CS 3 の発売が話題になっているが、ぼくがいま使っている Illustratorは、ただの SC。CS 3 にバージョンアップするつもりはない。8.0.1ぐらいで十分なんだが、OS X や インテルiMac の都合で CS を使っているだけで、複雑な機能はいまだによく分からない。Illustrator を使うのはペンツールで、マークやロゴをトレースするのが主な目的だから、それならバージョン5でも十分なんだ。でも、せっかくの機能なんだから、それらを使って少しは気の利いたウェブサイトのデザインパーツを作りたいと思っているが、どうしても Illustrator の学習は優先順位が低くて、時間が取れない。

Illustrator に初めて触れたのはまだ、MacPlus の時であの9インチのモノクロモニターで作業ができた。バージョンも1.x だった。本格的に使い出すのは、SE30 の時でバージョン3からだった。写真はパッケージに同梱されていたもので残っているものはこのテクニック集だけ。上が、バージョン3、下は5のテクニック集。それぞれ(C)は、1992年と1994年となっている。

1175766268Illustrator というと「ペンツール」の習得につきるけど、最初は大変だった。当時は、「.Too」がマック関係のフェアを開催するたびに、アドビの人が使い方をレクチャーしていた。それを一番前の席で、プロジェクターの画面を食い入るように見て、終わるとすぐに自転車で事務所にもどり、同じことをするのだが、できない。再び、自転車で会場にとって返して、次の時間のレクチャーを受けていた。ぼくは、こんな風に無料の機会をどん欲に利用して、すべて独学でマックもソフトもマスターしてきた。

で、ペンツールだが、そんなことを何度か繰り返しているうちに、ある時、あっけなくバスを描くことができた。ちょうど、自転車に初めて乗れた時とか、泳げるようになった時の感じと同じだと思う。

ある日のこと、日本橋の小さな雑居ビルの2階にあったマック専門ショップ(当時は小さなマック専門ショップが何件かあり、そこでの情報収集が役立った)で、デザイナーのT氏に会った。南海電鉄の駅舎の改築に伴うサインのデザインをしているが、今は必死で元になる文字をトレースしているんだ、と言っていた。その頃は、マックの日本語書体はモリサワの基本の5書体しかなかった。「新ゴファミリー」がリリースされるのは、まだまだ数年は先のことだった。

T氏の言葉に刺激を受けて、ぼくは、写研の写植書体の「ゴナファミリー」のトレースを始めた。ヒマがあってもなくてもトレースに明け暮れた。自分の仕事で使うだけだから、ひらがなとカタカナ、それに使用頻度の多い漢字をトレースしていたが、実際の仕事で使う段になると、たいていはその中にはなくて、新たにトレースということになった。でも、その時の経験が生きているので、今でも、ロゴだのマークのトレースは正確に短時間に仕上げてしまえる。これは Photoshop での写真の切り抜きにももちろん応用できることだ。

こんな風にIllustratorとつき合ってきたから、今の高機能なIllustratorとは感覚的になじめないでいる。でも、何とか親しくなりたいとは思っている。