上巻はアップル・コンピュータの初期や MacPlus 以前の Apple II などの記述が多かった。面白いけど、遠い過去のことだった。本書、下巻は記憶に新しいできごとということもあるが、劇的な変化が満載でおもいろいったらない。ジョブズの復帰、iMac、マックOS X、インテルマックなどだ。ジョブズのネクストから、マックOS X につながっていく流れなど、とてもダイナミックだ。今までも、雑誌などで、切れ切れに伝わっていた知識が、本書によって整合性のある大きな時間の流れとして把握される醍醐味。一企業の社史にしかすぎないのに、どうしてこんなにおもしろいのだろう。
本書を読んでいると、増々マックが好きになる。マックOS X の発表が2000年1月、そのパブリック・ベータ版が9月に出荷されて、大騒ぎしているのを人ごとのように眺めていた。OS X を使う予定が全くなかったからだ。99年10月にリリースされた OS 9 でさえ使っていなかった。その頃は、ずっと、OS 8.1 を使っていた。DTPを仕事にしている限り、種々の理由から OS 8.1 を抜け出せる見通しはなかった。けっこう暗かった。
ぼく自身は仕事をDTPから徐々にWeb制作にシフトしていったが、その頃は、WebをやるならWindowsマシンとまことしやかに言われていた。これも、暗くなる一因だった。マシンからソフトウェアまで、マックと同じ環境に整えるなんて資金的に不可能に近かった。それが、2002年11月に iMac を購入、インストール済みの OS X 10.2 に触れて、ぼくはこの先ずっとマックで行く、と決めたんだ。それだけ OS X のインパクとは大きかった。さらに、06年3月に購入した インテルiMac でその思いを強くした。このように、個人的にもマックをめぐる劇的とも言える変化だが、今まではユーザーには伺い知ることのできなかった事実を読めるんだから面白くないはずがない。
「あとがき」から本書の由来を以下に整理すると・・・。
1999年、オーウェン・リンツメイヤー著『Apple Confidential: The Real Story of Apple Computer, Inc.』(邦訳『アップル・コンフィデンシャル――誰も書かなかったアップル・コンピュータ20年の真実』アスキー、1999年)。
2004年、オーウェン・リンツメイヤー著『Apple Confidential 2.0: The Definitive History of the World’s Most Colorful Company』
2006年、04年の2.0を原書とし、90年以来アップルを取材し続けてきた林信行氏の知るアップル史を書き加え、さらには原書には書かれていない日本での出来事やアップルコンピュータ日本法人の活躍を盛り込んで、2.5j となっているのが本書。
林信行氏はあとがきで、ウェブでの連載著述を紹介している。
最近始めた「ジョブズ・アンド・カンパニー」と中断している「Apple ここだけの話」も復活させたいと語っている。
アップル・コンフィデンシャル2.5J 下
著者 オーウェン・W・リンツメイヤー、林 信行
発行 アスペクト、2006年5月