クロード・マルタンゲの素敵なストーリーの絵本 / ゆきのしたのなまえ

こころにジワーっと染み込んでくるお話の絵本。ストーリーはシンプルだ。街から郊外へ祖父と孫が散歩をしている。お話は二人の会話で構成されている。なんでも、祖父は夫婦で旅をしていたとのこと。ドイツの小さな町の有名な教会に立ち寄った時のことを孫はもう何度も聞いているらしいのだが、またその話を祖父にねだっているわけ。

絵は細い線画に彩色した淡い水彩画。二人は町中を歩いていると思っていたら、話に気をとられている間に郊外の広い風景に出ていた、という具合にぼくは絵の中に溶けこんでしまっていた。

そのドイツの教会を出たら、一匹の犬と一緒に毛布にくるまっているものごいの男がいたというわけ。その前に置かれた帽子にお金を投げ入れたんだけど、旅の間、男と犬の表情が忘れられなくて、スイスに帰ってから手紙を書くんだ。10月7日ドーム教会の入り口で・・・という宛先で。どうのように男に手紙が渡ったのかはちょっといい話。でも、本題ももっといい話なんだ。

孫は犬の名前は・・・。ルビーだよ、と祖父。じゃー、その人の名前は、知ってるんでしょ。ああ。でも、いおうとは思わんよ、と祖父。この名前は「ゆきのした」にそっと隠しておくつもりだ、ということを祖父は孫に説明する。お前に分かるかなー。わたしも歳をとってはじめて分かったことだからと、祖父は孫になぜ名前を明かさないかを説明する。

ふーん、歳をとって初めて書ける本がある、と思った。作者のクロード・マルタンゲは1920年、スイスのジェネーブ生まれ。2003年に出版されているらしい。

ゆきのしたのなまえ
文 クロード・マルタンゲ
絵 フィリップ・ディマ
訳 ときありえ
発行 講談社、2006年11月

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カテゴリー: 絵本