フランソワ・オゾン監督の詩のような短編映画 / 『海をみる』と『サマー・ドレス』

海をみる

1997年フランス映画。小島の一軒家にサーシャ(サーシャ・ヘイルズ)が赤ん坊と住んでいる。夫はパリにいる。そこへバックパッカーのタチアナ(マリナ・ド・ヴァン)が現れて、庭にテントを張りたいという。許可したサーシャはタチアナを食事に誘ったり、浴室を使わせたり、赤ん坊を連れて海岸に行ったりとなにくれと世話をやく。美しい映像の静謐な中にタチアナの寡黙さがスクリーンにエキセントリックな緊張を強いる。

海岸でタチアナは日光浴をしているサーシャに、林の中の男たちのセックスを眺めていたといって立ち去っていく。林の中の半裸の男たちの中に入って行くサーシャ。
その夜、全裸で赤ん坊とベットで寝入っているサーシャを見下ろしながら、服を脱ぐタチアナ。

翌朝、夫が帰ってきて、サーシャの死体を庭のテントに発見する。青い空、青い海の美しい小島を離れる定期船のデッキにはサーシャのサマードレスを着たタチアナが赤ん坊を抱いて海をみている。

サマー・ドレス

1997年フランス映画。こちらはコミカルな詩情の短編。男二人の恋人同士がコテージを借りている。音楽に浮かれているリュックがうるさくて、ミックは(フレデリック・マンジュノ)自転車で海岸へ走る。誰もいない砂浜で全裸で泳ぎ昼寝をしているところへ若い女ルシア(ルシア・サンチェス)がやって来る。タバコの火はないかと尋ねられて目をさます。横に座って、ルシアは美しい青年にいくつかと尋ねる。18とミック。私もとルシア。あの森へ行こうとルシア。なぜ、とミック。やりたいから、とルシア。

やってから砂浜に帰るとミックの服がない。ルシアはバッグからサマー・ドレスを出してミックに貸す。サマー・ドレスのミックが自転車で走る。コテージに帰るとリュックが待っていて、サマードレスのミックに激しく求める。翌朝、破れたサマー・ドレスを繕って、船着場に急ぐ。ルシアが待っている。ドレスはあげると言う。また、役に立つでしょう、と。キスをして、ルシアは定期船に乗り込む。

同じ小島を舞台に、ピリピリするような緊張を強いられる『海をみる』と思わず微笑んでしまう軽妙なタッチの『サマー・ドレス』は、まるで「詩」のような映画だ。フランソワ・オゾン監督からすごい才能のほとばしりを感じた。

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