リスベート・ツヴェルガーの2冊目の『くるみ割り人形』

本書のまえがきに、ホフマンの物語を簡潔な文にしたズザンネ・コッペが書いています。
「1980年、絵本作家として歩み始めたころ、ツヴェルガーは『くりみ割り人形』を発表しました。それから23年以上たって、ツヴェルガーはあらたに『くるみ割り人形』を描きました。過去の自分の作品に挑戦したのです。そんなだいそれた企ては、聞いたことがありません。でも、その出来映えはおどろくべきものでした。」
とあるように、ツヴェルガーの2冊目の『くるみ割り人形』です。出来映えを単純に比較することはできないとぼくは思っています。ただ、同じ作家のものとは思えない大きな違いです。ツヴェルガーのファンなら、どうしても比較したくなるでしょう。

どちらかと言うと、ぼくは最初の方が好きです。絵本としての世俗的な画風がホフマンの幻想的なイメージをふくらませてくれます。2度目の本書はツヴェルガーの初期に比べて明るい最近の画風です。特に本署では、絵が抽象化されて上品で、アート性が高くなっています。抽象化されている方が、一般的には物語のイメージがふくらみそうに思えるけど、本書に限ってはそうはなっていないように思えます。

こういうことは、一冊目との比較で言えることで、本書のツヴェルガーの絵が魅力的であることは、最近の絵本同様に変わりありません。絵の中にひきこまれます。本書には朗読のおさめられたCDが付いており、これを聞きながら絵を眺めるのも良かった。本書の最初に「わが歯医者先生に・・・L.Z.」と献辞があります。笑ってしまいます。ぼくが歯医者通いをしているせいもありますが、これが粋な献辞であることは、内容を知ると分かります。

くるみ割り人形
原作 E.T.A. ホフマン
文 ズザンネ・コッペ
絵 リスベート・ツヴェルガー
訳 池田香代子
発行 BL出版、2005年12月

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カテゴリー: 絵本