ニール・ヤングのファンじゃないが、ジム・ジャームッシュの映画(1997年)なので見た。ぼくがロックを聞くのは、70年代後半のパンク・ロックからで、ジャズばかりを聞いていたので、それ以前にロック・ミュージック全般を聞いたことがない。パンク・ロックの後もそのままニューウェブ・ロックを聞いていたが、それらの新しいロックが形骸化してつまらなくなり、何を聞いていいか分からなくなった。で、80年代後半からは少しの間、パンク以前のロックを聞き出した。
ジム・モリソン、ジミー・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン、ボブ・ディラン、ルー・リード、ローリング・ストーンズなんかを聞いているときに、ニール・ヤングも聞いた。しかし、ニール・ヤングだけはどうしても聞けなかった。本ドキュメンタリーの『イヤー・オブ・ザ・ホース』では、ニール・ヤングとクレージー・ホースのライブ・シーンがイヤというほど見ることになる。広いステージの中央で、4人のクレージ・ホースがほとんど一塊になって、延々とプレイを続けている様子は異様だった。
ときにオーディエンスも映し出すのだが、ぼくもその中に居れば、間違いなくクレージー・ホースのサウンドにクレージーに酔っていたに違いないと思った。映像は8ミリフィルムを多用した荒い粒子とひどいブレだ。ライブ・シーンやインタビュー・シーンとともに、ツアーで移動中の流れる風景も頻繁に挿入される。荒れた粒子とともにその映像は詩となる。クレージー・ホースの魂を映し出した詩だ。もう、2、3度は見なければ、ジム・ジャームッシュの映画を見た、とは言えないようだ。