The Thing Called Love / 1993年アメリカ映画で日本未公開作品。ピーター・ボグダノヴィッチ監督は『ラスト・ショー』で有名な監督。あれは本当にいい映画だ。劇場で見たし、その後もビデオで何回かも見ている。しかし、とても暗い映画なのでこの数年は見ていない。本作の『愛と呼ばれるもの』は『ラスト・ショー』(1971年)と比べられる質の映画ではない。ほとんどB級作品であるが、そこはかとなくピーター・ボグダノヴィッチの味がする。
シンガーソングライター希望の若い女性がバスに乗ってニューヨークを後にする。目指すはナッシュビルだ。ナッシュビルのモーテルに宿泊しながら、カントリー&ウエスタン専門のライブハウスのオーディンションを受け続ける映画だ。このシンガーを演じているのが、サマンサ・マシスだが、この女優がもう少し魅力があればよかったのだが・・・。彼女の相手役はリヴァー・フェニックスで、この映画は彼の遺作だ。フェニックスも成功を夢見る若いミュージシャンを演じている。
もう一人、無名時代のサンドラ・ブロックが重要な脇役をやっている。本作が93年で、彼女を有名にした『スピード』は翌年の映画だ。彼女もナッシュビルでカントリー・シンガーを目指しているが、あきらめてハリウッドに行ってコメディアンになると言ってみたり・・・、結局はニューヨークで舞台を目指すと言って、ボーイフレンドの運転する車でナッシュビルを出て行く。この後、実際に『スピード』でスターになるわけで、ついつい実際の出来事と重ねてしまう。まったくの3枚目をうまくこなしていた。
サマンサ・マシスが深夜のダイナーで必死で歌詞を書いていたり、オーディションを落ち続けるので、プロデューサーに助言を求めたり、胸にジーンとくるシーンがないわけでもない。ミュージシャンを目指す音楽ものの青春映画の定番といったところ。それを超えるものはない。