ストーリーのつながりに無理があるけれど、数々のエピソードはとても面白い。2000年に原書が出版されている新しい小説だが、物語は古い時代。といっても妖精や魔法使いが歩き回っている小説ではない。
少年のトメックは小さな村のはずれで、「よろずや」をやっている。父親から引き継いだ店だが、代々引き継がれてきたものだ。父を亡くして少年は一人で生活をしている。
「棒キャンディーはありますか?」と、ある日一人の少女がよろずやに入ってきたことがトメックの冒険のきっかけだった。トメックは一目で少女に恋をする。クジャー川を捜して旅をしているという少女を追って、後日トメックも旅に出発する。
クジャー川では海から山の山頂に向かって水が流れているという。その山頂の水を飲むと不死を得られるという。少女はどうしても死なせたくない小鳥のためにその水を求めて旅をしている。トメック少年は少女を追って旅をする。
旅の途中に様々な出会いがある。よく思いつくものだと感心するようなエピソードがたくさんで読み飽きない。ちょっと都合は良すぎるよ、なんて文句を言いながらも、少年と少女の再会、そして目的のクジャー川に至るころには夢中で読んでいた。
1982年生まれの画家による装丁がとてもいい。
トメック――さかさま川の水1
著者 ジャン=クロード・ムルルヴァ
訳者 堀内虹子
画家(挿絵と装丁) 平澤朋子
発行 福音館書店、2007年5月
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