ラッセル・E・エリクソン作、ローレンス・ディ・フィオリ絵、佐藤涼子訳
評論社、2007年12月発行
数ヶ月をかけて読んでいたこのシリーズもとうとう最後の作品になってしまった。これでおしまいだと思うと読み終わるのがおしい。でも、おもしろいのでまたまた一気に読んでしまった。といって繰り返し読む程でもないし・・・、数年経てばまた読み返すかも。精神安定剤のような効用のあるシリーズだった。
今回は、いつもの主人公ウォートンとモートンのおじいちゃんが登場する。ぼくの記憶では新顔だけど、おじいちゃんの家と二人の家は廊下でつながっているらしい。だったら、これまでも登場しているはずだけど・・・。そのおじいちゃん自慢の金時計がカラスたちに奪われてしまうところから、ウォートンのいつもの冒険がはじまるというストーリー。
今回の悪役はカラスたち。ウォートン側には失敗ばかりするこまったちゃんのハタネズミと盲目で孤独なアオカケスが味方をする。今回もほっこりとする落としどころが用意されていた。
なぜ、このシリーズにはまったんだろう。内容はほんとうに子ども向けの冒険物語だけど、妖精も魔法使いも無縁なので物語に影がない。なので単純といえば単純。アウトドア小説といえばあたっているかもしれない。一緒に暮らす主人公の兄弟と、二人をとりまくさまざまな動物たちとのコミュニケーションがほんとにホノボノしているところがとてもいい。
そのコミュニケーションだけど、1作目の『火曜日のごちそうはヒキガエル』の悪役で登場したミミズクと3作目の『ウォートンのとんだクリスマス・イブ』の悪役のクマの二匹がぼくとしてはお気に入りかな。二匹とも強いけど、孤独な生活をしている。それがおせっかいヒキガエルのウォートンとコミュケーションを深めていくところが何ともいえん。仲良しは良い、という単純なレベルではないところがこのシリーズの魅力だと思う。
本書の訳者あとがきによると、作者のエリクソンは影響を受けた作家にE・B・ホワイトの名をあげ、特に『スチュアートの冒険』だと言っている。これは読んでいないが、ホワイトの小説は『シャーロットのおくりもの』をもう何年も前に読んでいる。なるほどなと思う。シャーロットをまた読みたくなってきた。
そうそうこのシリーズの魅力はローレンス・ディ・フィオリの挿絵もかなり影響していると思う。本書でもカラスがいい、それ以上にリュックを背負ったアオカケスの絵が素晴らしい。シリーズ中の動物たちでも最高にいい感じだった。