昨夜、絵本『ビロードのうさぎ』を読んでから寝たら、布団の中で飼いネコのクマのぬいぐるみのことを思い出してしまった。飼いネコは7年前に19才で死んだけど、ほとんどをマンションの部屋の中で過ごした。当時、ぼくたち夫婦は近くに事務所を持っていて、朝はふたりとも出勤して、帰りは夜になるので、一匹でさびしかろうと、何も無い部屋だったが、ネコのために観葉植物を置くようになった。
さらに、今はもうなくなったが、心斎橋のソニー・タワーでピーター・ラビットのぬいぐるみを買った。今みたいに雑貨屋さんのなかった時代でソニー・タワーはおしゃれな小物がたくさん置いてある貴重な存在だった。
飼いネコはそのピーター・ラビットが気にいらないらしくて、立てかけてあるピーターに近寄って、前足でパンチをお見舞いして倒してしまう。ま、ピーターはいたずら好きの生意気なウサギだし、両方共オスだし、しかたないかと、ピーターは早々と捨ててしまった。飼いネコがビアトリクス・ポターの絵本を読んでいるはずがないので、ピーターを嫌ったのは体がネコよりもちょっと大きかったせいに違いない。
そんなことがあった後、やはり心斎橋の今はない小さな雑貨屋さんでカミさんが「これだ!」と言って高かったけど、クマのぬいぐるみを買った。ティディベアのような毛羽立ったものでなく、ビロードではないけど、表面が生地でほどよい弾力が気持ちのよいぬいぐるみだった。白い襟のついた薄いピンク色のワンピースを着ている。襟には赤いリボンが似合っていた。
すぐに飼いネコのお気に入りになってしまったのには、ふたりで驚いたものだ。以来、写真にあるように膝枕で寝ている姿なんて、ほんとに可愛かった。この写真をよく見ると、寝ているようだが耳はピンと立っているし、表情が緊張している。いかにも、「おっさん、うるさいよ」と言っているみたいだ。カメラを向けたりすると異常に反応する性格は最後まで続いた。子ネコの時に捨てられて、悪ガキにいじめられていたせいだと思う。
たまには、鼻先をぬいぐるみの鼻先にチョイとキスするみたなこともするし・・・。たぶん、飼いネコにはただのぬいぐるみでなかったんだろう。