公開当時、『未来世紀ブラジル』には余り関心がなかった。テリー・ギリアム監督はモンティ・パイソンの一員であるが、そのブラック・ユーモアが肌に合わなかったからだと思う。公開数年後にテレビ放映で見ているが、やはりつまらないという印象しか覚えていない。この映画の評判はすごかったが、同じ近未来映画なら、この映画よりも3年前に公開されたリドリー・スコット監督の『ブレード・ランナー』がムチャクチャに好きだった。封切りで見に行き、さらに2番館でも映画館で見た。真面目でリアルな映像が好きだった。『未来世紀ブラジル』は近未来の暗い現実を描くのに笑いを交えるのは観客への過剰なサービスで余計なことだと思っている。『ブレード・ランナー』のように近未来の暗さと不安に同期できることが映画の楽しみだと思う。
今回『未来世紀ブラジル』を見たのは、数年前にケーブルテレビから録画しておいた3倍モードの条件の悪いものだったがおもしろかった。機会をみつけてDVDのきっちりとしたものでもう一度見たいものだと思った。ただし、コメディー的な要素は相変わらず好きになれない。それを差し引いてもこの映画は未来を予測していると感じておもしろかった。
見るきっけは、IT評論家佐々木俊尚さんの『ウェブ国産力―日の丸ITが世界を制す』を読んだから。冒頭、日本の技術系ITベンチャーの「未来検索ブラジル」が紹介されているのを読みながら、同じようなタイトルの映画を見たくなった。この本を読んで、この映画を見ると映画のシーンがとてもリアルに思えてくる。
少し前までGoogleが個人情報をデータ化するのではないかという不安が言われていた。しかし、開発中の国産の「情報大航海プロジェクト』検索エンジンはそれどころではないように思える。検索エンジンのおかげでユーザーの利便性は増すだろう。しかし、それは同時に管理でもあるように思える。このスタンスから映画『未来世紀ブラジル』を見るとほんとうにおもしろい。