ヒキガエルとんだ大冒険6 ウォートンとモートンの大ひょうりゅう

ウォートンとモートンの大ひょうりゅう (評論社の児童図書館・文学の部屋 ヒキガエルとんだ大冒険 6)ラッセル・E・エリクソン作、ローレンス・ディ・フィオリ絵、佐藤涼子訳
評論社、2007年11月発行

本書を読んでしまって、このシリーズも残すところ1冊になってしまった。活字が大きめの150ページたらずの本なんで、パパッと読んでしまえるけど、読むのがもったいなくなる。ほんとストーリーの組立てがムチャクチャにうまいと思う。それに、ところどころに挿入されている絵もとてもいい。ま、いくらおもしろい内容って言っても繰り返し読むような本じゃない。ストーリーが分かってしまうとおもしろさは半減するはずだ。

いつものように二匹のヒキガエルの兄弟の快適な家から始まるけど、ハチミツを採るために雨の中を外に出たら、アライグマとばったり。逃げたところが、アマガエルのおばさん二人組の住まいだった。そこから冒険また冒険がはじまるってわけ。

主人公のヒキガエル兄弟は、掃除好き、冒険好きのウォートンと料理好きでちょっと落ち着いているモートンがうまいことお互いがおぎない合って生活をしている。アマガエルの二人組はあらゆる道具など専用のものを持ち、「自分のものでないものには、さわらないこと」を規則にして共同生活をしている。

ちょっと極端すぎるぐらいに個人の持ち物が明確になっている。ヒキガエルの二匹が感心するぐらいだ。お互いに共通の領域を持つことで親睦度が増すと考えるのが普通だと思う。でも、これってよく考えてみるとフィフティ、フィフティの関係を作ろうなんて言いつつ、どちらか一方が多くの利益を得ていたりする。自然に上下関係が生まれてきたり、はしこい方が得をしているのが現実じゃないかな。

上下関係のない共同生活を持続させるための方法をアマガエルの二人組が示唆しているのかもしれない。そしてこのシリーズを通して多くの孤独な動物が登場した。本書の場合はアライグマだが、かれらはコミュニケーションがにがてで孤立しているというストーリー仕立てになっている。その彼らがともだちを得るまでの過程が絶妙の心理描写となって物語が組立てられているのが本シリーズだ。ほんとおもしろい。

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カテゴリー: 読書