“SHAPEDNOISE『Different Selves』JAPAN TOUR in OSAKA”(2016/02/11 @circus osaka)へ行った。このパーティの全容に浸りたくてスタートから行き、atmosphäre のアフターが終わるまでいた。ムチャクチャに濃いパーティだった。最近のぼくのお気に入りの言葉、「音は視覚と異なり、魂にじかに触れてくる。音楽は心を強姦する。」というパーティだった。これは伊藤計劃の近未来SF小説『虐殺器官』に書かれている言葉だ。
SHAPEDNOISE はウィリアム・ギブソンにインスパイアされた12”をリリースしているというので Apple Music を探して何度も聞いた。制作した3人組の名義が “THE SPRAWL”。”スプロール” ってギブソンの近未来SF小説『ニューロマンサー』に何度も出てくる単語。いやでも上がる。だからパーティのライブでも上がりっぱなしだった。
特に、去年末から今年にかけてぼくは、近未来SF小説を読んで、クラブに行って音楽を聞いて踊り、クラブから帰ってSF小説や漫画を読むを繰り返している。それらの小説や漫画に描かれる未来はディストピア的で、ノイズを基調とする電子音楽ととても合う。つまり、それらの音楽に心を強姦され続けている。
そして、ぼくはそういう小説や漫画を読んで不安にかられているし、そういう音楽を聞いてさらに不安にかられている。それはアイデンティティの希薄さからきていると思う。小説や漫画や音楽からその希薄さを気付かされてるんだと思う。伊藤計劃『虐殺器官』の主人公クラヴィスは、はっきりと無宗教だと言っている。カトリック信者の同僚が自死して彼は不安にかられる。士郎正宗の漫画『攻殻機動隊』の主人公草薙素子にしても宗教心はないだろう。かれらはそれぞれ軍人や公安警察でありながら愛国心がない。
森博嗣の小説『スカイ・クロラシリーズ』の主人公カンナミはあるときから成長が止まり、自死とか事故とか殺されない限り永遠に生き続けることになる。そして優秀な戦闘機乗りだが、やっぱり彼女にも宗教心も愛国心もない。ぼくはそこに共感してそれらの作品を愛読しているが、読後に満たされることはなく、不安が大きくなるばかりだ。例えば、草薙素子は全身が義体だが、脳髄だけは人間から取り出されたものだからロボットではない。ある時、難民が大勢殺された中から、妊娠中の死体のまだ死んでいない胎児の脳髄が取り出されたものが現在の素子の脳髄だ。ときどき、その脳髄に宿る魂を感じて不安にかられる。彼女はそれをゴーストと言っている。ぼくの不安も素子のゴーストみたいなものだったらおもしろいと思ってるんだけど・・・