ジェイムズ・ボールドウィンの短編小説『ソニィのブルース』(1957年)

ジェイムズ・ボールドウィンが “ジャズ” を書いた短編小説『ソニィのブルース』(1957年)を読んだ。

1940年代、ビバップの時代のNYCハーレムが舞台。黒人の歳の離れた兄弟の話し。兄は家庭を持ち、堅実な生活を築く人生をやっている。だから弟ソニィがジャズミュージシャンになりたがっていることが不安でしょうがない。それで食えるのかとか、ヘロイン中毒になりはしなかとか不安ばかりを口にする。

ソニィにとって人生で重要なことは、食えるとか食えないという次元のことじゃなく、押さえきれない衝動のようなものを「音」に託すことなんだ。その衝動のようなものが「ブルース」だとぼくは思っている。ブルースも、ジャズも知らない兄が弟ソニィを通してそれらを理解する内容なんだけど、勿論それは読者に「ブルース」を伝えようとしている小説となっている。

小説の最後で、ソニィは兄を下町のナイトクラブへ連れて行き、演奏を聞かせる。客がひしめく真っ暗なクラブに驚く兄だったが、そこで年上の黒人ジャズミュージシャンたちが若いソニィのプレイをリスペクトしているのを目の当たりにして、ブルースを感じていく。

小説の背景には白人の黒人に対する人種差別がある。ぼくはレイシストや排外主義者はブルースを感じることはできないだろうと思う。ブルースは何かからの解放、その先に自由を見る感覚だから。

ジャズだけでなく、ロックにもレゲエにも根っこにはブルースがある。クラブに行くぼくは、まるでソニィの兄のように真っ暗でダンサーでひしめくフロアに立つ。そしてブルースを感じながら朝までねばっている。