Rain, Manya Stojic, 2000年発行
アフリカの乾いたサバンナに雨が降る。まず、ハリネズミが雨の匂いをかぎとり、シマウマに伝える。シマウマは遠くで稲妻の光を見る。それをヒヒに伝える。ヒヒは雷鳴を聞き、サイに伝える。サイは体に雨滴を感じ、ライオンに伝え、ライオンは雨滴を味わっている。雨は乾ききったサバンナの赤い大地を潤し、植物や虫、そして動物たちはひと時の水の恵みを満喫しつつも、サバンナは再び灼熱の赤い大地に戻っている。
絵は非常に大胆な筆のタッチと構図で、特に動物たちはユーモアを伴って生き生きと描かれている。シンプルなストーリーで文字が大きく、強調する単語はさらに大きくて詩のようだ。ダダの詩を思わせるが、あくまで幼児が読める絵本だし、決してアヴァンギャルドなレイアウトじゃない。絵本全体から勢いがほとばしっている。
絵本をぺらぺらめくって、作家はアフリカ人だと思い疑わなかった。しかし、本書の作者紹介を読むとユーゴスラビアのベルグラード生まれでニューヨークとジンバブウェのハラレに住み、働き、現在はロンドンに住んでいるという。本書が子ども向けの最初の著書だと紹介されている。アフリカのジンバブウェでの体験をもとに描かれたことは間違いないと思うが、ユーゴスラビア生まれには驚いた。
ユーゴスラビアは1980年代から90年代の民族主義の高まりから、暴力を伴う異民族間の激しい紛争へと発展し1992年に社会主義連邦共和国は解体した。ベルグラードは2006年からセルビア共和国となっている。非常に複雑な歴史で簡単には理解できないが、憎悪をともなった民族間の激しい紛争が伝わっていたのは、そんなに昔のことではない。作者の Manya Stojic がベルグラードでどのように成長したんだろう。それとサバンナがどう関係しているんだろう・・・。