もりもと崇 著(エンタープレイン、2010年1月発行)
江戸時代、大坂新町は遊女の和泉がヒロインの歴史マンガ。かなりエロティックなシーンもあるが、和泉の美貌とその付け人の少女の可愛い絵がほとんど。カミさんが女友だちに借りたので、読んだわけ。そうでなければ、エロ漫画を買う趣味はないので見る機会はなかったと思う。郭の遊女というと哀れを誘うが、本書のヒロイン和泉は気丈に生きる強い女だ。人物描写やストーリーに余韻を残すほどの深みはないが、大坂の歴史ものとして読むと、随所に解説もあるので非常に興味深い。
なんたって新町は地元だ。新町の郭は江戸時代以降も続き、第2次大戦末期の大空襲で消失したらしい。つい60数年前まで現存していたのだ。本書の絵に新町橋がある。大坂新町廓(くるわ)東口大門とあり、往時の賑わいが想像できる。絵によると現在の四ツ橋筋の新町橋交差点に大門があり、その東側、現在の高速道路の下に新町橋があったはずだ。高速道路の下には、西横堀川が流れていた。
何年か前に土地の歴史家の案内で新町と堀江を歩いたことがある。その時に聞いた話しだが、北堀江の和光寺のそばに阿弥陀池という池がある。江戸時代、そこは名所で、桜の咲く頃には、新町の遊女が客を伴って遊びにきたという。飯屋やなんかもあって、そこの女が客を取るようになって、池の東側一帯に廓が広がったと聞いた。西区っていうのは、材木屋の街と聞いていたが、長堀川をはさんで南北に遊郭があったということらしい。
本書には大坂落城のエピソードもある。大坂は日本史上、最大にして最後の攻防戦の舞台だという。大坂の陣は関ヶ原のように、原っぱで戦ったわけではない。多数の住民が巻き込まれ、暴力・強姦・放火・略奪にさらされ大量の難民が発生したとある。堺、大坂の両都市を東西合わせて、十万人の軍勢が蹂躙したというから想像に余りある。今までぼくは関ヶ原の戦のように両軍の兵が戦ったと漠然と思ってた。しかし、大坂の町中が戦場というと、ちょっと戦慄的光景が浮かぶ。
ここんところが本書を読んだ最大の収穫かな。