林信吾著(平凡社新書267、2005年4月発行)
―“イギリス化”する日本の格差 (平凡社新書)
平凡社
売り上げランキング: 166054
著者の本を初めて読んだが、他も読みたくなった。amazonで見たら『昔、革命的だったお父さんたちへ?「団塊世代」の登場と終焉』なんてのがある。ぼくはほぼ団塊。革命的だったかどうか分からないが、ぜひ読まなくっちゃ。
さて、本書は2005年に出版されているが、格差社会と呼ばれるこの日本の現象について理解を深めてくれる内容だった。著者は83年に渡英して10年間をイギリスで働いている。その経験に基づいたイギリスの階級社会の解説が最初にある。これはロックを聞く上でも、とても良い知識となるはずだ。
数年前のことだけど、年収300万でも、のんびり楽しく生きればよいというのを聞いたとき、これは良い考えだと思っていた。高収入とか物質的豊かさを求めるのが当たり前な価値観のなかで、年収300万でも精神的に豊かに暮らすのは素晴らしいことだと思っていた。高収入を求める人がいる一方で、それを求めない人がいる。それがいいと思っていたわけ。
本書を読むとそれは、底辺の労働を知らない人だから言えることだと書いてある。改めて考えてみたら、ぼく自身の経験からも300万でのんびり楽しくはないよな、と気づいた。目一杯働いたら、600万になる人が労働時間を半分にしたら年収も半分になるけど、余った時間を自分のために有効に使いたい・・・なんてことは一般的にはない話だ。
年収200万円とか300万円というのは、長時間残業が当たり前で、休暇もなく、病気でもなかなか休めない状態で、やっと得ることのできる収入だと思う。そして、のんびり楽しくなんて時間は残っていない。ぼくの経験から、そして本書を読めば、これが普通だと分かる。
問題なのは、教育を通してネオ階級社会が形成され、選択肢を奪われ、低所得層に組み込まれる若者が増加しているということらしい。