詩人 松井茂さんの「Camouflage」展を西区京町堀の AD&A gallery で見てきた。詩人の作品をギャラリーで見ることが初めてのことで、見る前からワクワクして行った。内容はとても刺激的だった。
松井茂さんのWebサイトを見るとどのような作品なのか、だいたい分かるが、「Camouflage」展の1階は、詩集『Camouflage』の印刷された大きな用紙を壁に並べたものだった。用紙は断裁前の丁付されたものだ。右上の写真はギャリー入口横のポスターの一部を撮ったものだが、このようなパターンからなる、詩集『Camouflage』1から12までの12冊分が壁に貼られている。
ちょっと見ただけでは、同じパターンにしか見えないがよく見ると全ての詩集が微妙に違う。AD&A gallery のWebサイトの「Event / 松井 茂 Camouflage」ページの下記を読むと、パターンに見えたのは、「/(スラッシュ)」と「\(バックスラッシュ)」の2文字による詩であることが分かる。
2008年2月29日からはじまった松井茂の詩集「Cmouflage」の刊行は、2009年1月29日現在12冊が刊行されている。1冊当たりは、「/(スラッシュ)」と「\(バックスラッシュ)」各42,000文字、合計84,000文字(400字詰め原稿用紙210枚)から構成されている。
タイトルである「Camouflage」は、ウラジーミル・ナボコフの小説『賜物』にある一文からの引用による。「言葉の綾や調子のなかに、あるいは言葉のカモフラージにかくされて、彼が伝えたがっている重要な思想がふともれ出るのであった。」(大津栄一郎訳)
2008年2月29日にphotographers’ gallery(東京)で1日だけ行われた同タイトル展では、 3冊の詩集それ自体が展示された。今回はテキストそれ自体が展示される。他に「量子詩」または「同時並列回路」も出展予定。
2階はプロジェクターによる動画が大きなスクリーンに映し出されている。ごく普通の400字詰め原稿用紙に漢字の「一」、「二」、「三」の3文字が不規則に升目を順番に埋めたいく。その際、「二」、「三」は筆順をなぞるように「一」づつ順番に表示される。升目の全部が埋まると、新たな用紙にて、最初の升目から繰り返される。単にリピートしているだけなのか、何枚もの原稿用紙に「一」、「二」、「三」の3文字だけによる「詩」が延々と書き綴られているのかもしれない。「Camouflage」作者なら後者だったかもしれないが、そのときはアイデアに感心するばかりで確かめることに気がつかなかった。
松井さんのサイトを見ていたら、国立国際美術館で開催中の「新国誠一の《具体詩》 詩と美術のあいだに」のページにリンクされていた。ことばの配置や音を重視した具体詩というものがあることを始めた知った。松井さんの詩も具体詩というものなんだろうか。
デジタルとインターネットの新しい風景から誕生した「詩」のように感じた。