ジョン・コルトレーン / Coltrane

Coltraneジョン・コルトレーンの初めてのリーダー・アルバム。今までは気にしたことがなかったが、初リーダーということを意識して聞くと、コルトレーンの気迫が伝わってくる。ぼくが初めてコルトレーンを意識したのは『Live At The Village Vanguard』(1961年録音)を聞いたときだった。それまでは、ハードバップというかモダンジャズを聞いていた。しかし、『Live At The Village Vanguard』はモダンジャズの概念を大きく踏み外して聞こえた。ほんとうにびっくりしつつも、それ以来、急速にフリー・ジャズを聞くようになっていった。1965年頃、十代後半のことだった。

だから、ジョン・コルトレーンは最も好きなジャズ・ミュージシャンの一人だけど、60年代のインパルス盤意外はほとんど知らなかった。特に、50年代後半のプレスティッジ版は何枚も出てるけど、いろんなセッションの寄せ集めだったりで聞かずにいた。最近は録音日をきっちりと把握して聞いているが、プレスティッジ時代も興味深い。

この初めてのリーダー・アルバムだけど、最初のナンバー〈Bakai〉のちょっと不思議な雰囲気が気になる。原田和典『コルトレーンを聴け!』(ロコモーションパブリッシング発行)によると〈Bakai〉はキャル・マッシーの曲だが、「エメット・ティル殺害事件」に寄せたナンバーだそうだ。それは、1955年、黒人少年がリンチを受けて殺された事件。「エメット・ティル殺害事件」で検索すると詳しいことが分かる。

ぼくはこの最初のナンバーの由来を最近知ったばかりだが、ぼくがリアルタイムにコルトレーンを聞いてきたとき、彼のサウンドは1967年の死まで、常に当時の差別撤廃運動と重なっていた。コルトレーンの発言を聞いたり読んだりとかはなかったが、サウンドが当時のアメリカの公民権運動とダブっていた。そのことが、この〈Bakai〉で確かめられたような気持ちになった。

ほかのナンバーでは〈Straight Street〉と〈Chronic Blues〉のコルトレーンのオリジナルがいい。前者はきっちりと作り込まれたナンバー。後者のブルースはちょっと気楽で、何度も聞いている。

John Coltrane / Coltrane
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1. Bakai
2. Violets For Your Furs
3. Time Was
John Coltrane, ts
Johnnie Splawn, tp
Sahib Shihab, ba
Red Garland, p
Paul Chambers, b
Albert Heath, ds

4. Straight Street
5. While My Lady Sleeps
6. Chronic Blues
John Coltrane, ts
Johnnie Splawn, tp
Sahib Shihab, ba
Mal Waldron, p
Paul Chambers, b
Albert Heath, ds

1957.05.31録音

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カテゴリー: Jazz